琳派伝統「風神雷神図」比較
第1期の俵屋宗達。
その宗達に私淑した第2期の尾形光琳。
その光琳に私淑した第3期の酒井抱一およびその弟子の鈴木其一。
それぞれ100年近くもの断絶がありながら、先達の美意識やデザイン性、意匠などを引き継いでいるとかで、ひとつの流派と認識されている稀有な美術ムーブメント「琳派」。
その琳派には、先人の図柄を模写するという伝統がありますが、どういう星の巡り合わせでしょうか、今年は、その伝統的図柄のひとつである風神雷神図のうち、上に列挙した四人の絵師の作品が時を同じゅうして東京に集うという奇跡の年でありました。
各作品は以下の場所、スケジュールで観ることができます(ました)。
俵屋宗達《風神雷神図屏風》建仁寺蔵(国宝)
東京国立博物館『栄西と建仁寺』展
2014年3月25日(火)~2014年5月18日(日)
尾形光琳《風神雷神図屏風》東京国立博物館蔵(重要文化財)
東京国立博物館本館7室「日本美術の流れ」
2014年4月8日(火)~5月18日(日)
酒井抱一《風神雷神図屏風》出光美術館蔵
出光美術館『日本絵画の魅惑』展(前期)
2014年4月5日(土)~5月6日(火)
鈴木其一《風神雷神図襖》東京富士美術館蔵
東京富士美術館『江戸絵画の真髄』展
2014年4月8日(火)~6月29日(日)
私は、宗達、光琳、抱一は2014年4月29日(火)、其一は2014年5月4日(日)、と古い順ですべて観たところです。同じひとつの流派で、同じ図柄を使いながら、絵師によって、ずいぶんと出来不出来が激しいもんだと嘆息した次第。
風神雷神図におけるオレ序列は以下な感じ。
宗達>其一>>>>>(越えられない壁)>>>>>光琳>>>抱一
以下、個別に触れたいと思いますが、これはあくまでも風神雷神図屏風および襖に限っての見解です。
俵屋宗達《風神雷神図屏風》建仁寺蔵(国宝)
二神の表情や角の鋭角感に目が惹かれる。
時の流れで生じた傷みが、やはり気にはなりましたが、絵から放たれるアウラは力強いものがありますね。侘びたせいなのかもしれないけれど、二神の肌の色が良いです。
尾形光琳《風神雷神図屏風》東京国立博物館蔵(重要文化財)
間の抜けたというか気の抜けたというか、呆けたような二神の表情。
品のないベタッとした二神の肌の色。
墨の汚れかと見紛う、やる気のない黒雲。
あの見本を元にして、どうしてこうなったと唖然とせざるを得ない、あまりといえばあんまりな出来。
酒井抱一《風神雷神図屏風》出光美術館蔵
会場の説明によると、抱一は光琳の《風神雷神図屏風》を模写したという。
ダメなもんを見本にしたらもっとダメなもんができちゃいましたというサンプル。
気迫の欠片もない二神の表情。
風神の角が鈍磨して二股じゃなくなるし、雷神の歯に至っては落書き疑惑レベル。
二神の肌の色のベッタリとした品のなさ度は驚きの劣化。
なすりつけた墨を黒雲と言い張る度胸は、いっそ清々しい。
せめてオリジナルを見本にしておけば、もう少しマシだったんじゃないすかねぇ。
鈴木其一《風神雷神図襖》東京富士美術館蔵
それまでの三つの屏風は一日で全部観ました。後になるごとに酷くなる作品に暗澹たる思いでいたわけですが、八王子まで遠征した甲斐がありましたよ。最後に場外ホームラン!
屏風から襖へと媒体が変わり、キャンバスの形状が正方形から横長長方形に広がったという点を差し引いても、《風神雷神図襖》は素晴らしいです。
特に素晴らしいと感じたのは黒雲の表現。とりわけ風神の黒雲。
先達にはない、強い風になびいている疾走感に目が惹かれました。
つかみが大切&終わりよければすべて良し。
ってことで宗達と其一がすばらしかったので、良かった良かった。
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