『破天荒の浮世絵師 歌川国芳(前期)』

2011 / 06 / 06 by
Filed under: 展覧会日記 
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『破天荒の浮世絵師 歌川国芳(前期)』

『破天荒の浮世絵師 歌川国芳(前期)』

2011年は歌川国芳が亡くなって150年目だそうで、今、国芳が熱いらしい。
スカイツリーを既に描いていたなんてことも発見されて、いやがうえにも昂る歌川国芳熱!

それはともかく、最も大規模な展覧会は『没後150年 歌川国芳展』ですかね。
大阪市美術館静岡市美術館森アーツセンターギャラリーと巡回、10か月に渡って開催されます。

平木浮世絵美術館でも2011年7月2日(土)~7月31日(日)の会期で『浮世絵・武者絵展』と題し、国芳と月岡芳年をメインに据えた展覧会が開かれるとのこと。

そして浮世絵といえば此処、太田記念美術館でも2011年6月1日(水)~7月28日(木)の会期で標記展覧会が催されています。
本展覧会は途中、全点展示替をおこない、前後でまったく異なったテーマによる展覧会になるそうです。
前期は2011年6月1日(水)~6月26日(日)でテーマは「豪傑なる武者と妖怪」。
後期は2011年7月1日(金)~7月28日(木)でテーマは「遊び心と西洋の風」。

町のお化け好きとしては前期だけは見逃せん、てなわけで、2011年6月5日(日)に見てきました。

この美術館、ふだんは1、2階が展示スペースですが、本展覧会では地下も第3展示室として使用されています。力入ってますねー。
で、各階の展示内容のおおまかな傾向は1階が武者絵、2階が妖怪画、地階が妖怪画と役者絵となっています。

国芳は迫力ありますなぁ。実にダイナミックですね人物の描き方も構図も。妖怪画に限らず、どれも印象的な絵でした。が、あえて一連の妖怪画についての感想のみ。

やはり歌川国芳の妖怪画と言えば「源頼光館土蜘蛛妖怪図」ですかね。去年の夏、平木浮世絵美術館でも見ましたが、何度見ても良いものです。
これは老中水野忠邦の極端な倹約令・天保の改革に対する江戸っ子の怒りを表した風刺絵ですが、荒俣宏「帝都幻談」では、江戸を滅ぼそうとして出現した蝦夷の怨霊群を国芳が写生したものとなってます。
妖怪たちの群れが二手に分かれて対面していますが、向って右側の群れ、頭に髑髏を頂いて、細長く首を伸ばした髭面の大入道がツキノイ、向って左側の群れ、赤い衣を纏い、払子で采配を振るっているのがアヤカシ。それぞれ蝦夷の首長の怨霊という設定でした。
こういう造形の妖怪たちが蝦夷の怨霊ってのはずいぶんムチャだべさ、と思いながら読みましたがこれは余談。

源頼光と土蜘蛛をテーマにした絵は、これ以外にもいくつか展示されており、8対の脚以外に筋骨たくましい人間の腕を持ったもの(「源頼光土蜘蛛の妖怪を斬るの図」)など、面白い造形の土蜘蛛を見ることができました。

隠岐次郎有広」という絵にはむくつけき男に組み伏せられる化鳥が描かれています。
これは、鳥山石燕「画図百鬼夜行」では「以津真天」と名付けられた太平記に出てくる妖怪ですね。鳥山石燕でない以津真天は初めて見たなぁ。

出雲伊麿」という絵では、やはりむくつけき男が、海の中で怪物に刀を突き刺しています。この怪物は鰐鮫です。
ワニザメってのはもちろん爬虫類のワニではなく、魚類のサメなんですが、描かれているのはガメラの頭みたいな感じ。解説によると、この造形は葛飾北斎が「椿説弓張月」で描いた鰐鮫を参考にしたものとのこと。

小子部栖軽豊浦里捕雷」という絵は「日本霊異記」の一番最初の話に取材したものです。日本霊異記の記述を読むと、何となく俵屋宗達の風神雷神図に描かれた姿っぽい印象を抱きますが、この絵では「雷獣」として描かれています。

大物之浦平家の亡霊」は「舟弁慶」に取材した絵です。平家の亡霊たちが黒や茶色の滲んだ影として表現されています。珍しいですね。

ここらあたりが目を惹きました。おっと「相馬の古内裏」も忘れちゃいけない。

他にも、天狗や平家の亡霊、酒呑童子、蝦蟇仙人、猿神、大鯉等なかなかの充実ぶりで楽しい展覧会でした。



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