『牧野邦夫 ―写実の精髄』
2013年5月26日(日)、練馬区立美術館で標記展覧会を観ました。
会期は平成25年4月14日(日)~6月2日(日)なので、かなり滑り込みなタイミング。そのせいなのか、えらく混んでました。しかし、こういうどちらかというと病的な感じの絵の展覧会がこんなに混むとはなぁ。
一昔前ならこういう絵は忌避されていたように思うんですよね。ごく一部の好事家だけが話題にしたような。
ここ数年、毎夏、博物館や美術館という場で妖怪の展示がコンスタントに開催されていることなども考え合わせると、やはり時代はこういう「幻想」を求めているんだなぁ、ということをヒシヒシと感じた次第。
『空想の建築 ―ピラネージから野又穫へ―』
2013年5月11日(土)、町田市立国際版画美術館で標記展覧会を観ました。会期は2013年4月13日(土)~6月16日(日)。
考古学的調査で得られた学術的情報に、描き手の想像力を加えて描かれた古代エジプト建築。
版画「牢獄」シリーズのピラネージが、かくあるべしと描いた理想都市としてのローマ。
あるいは、ルネサンスから近代、そして現代の、版画によって表現されたいろいろな建築物や都市。
版画のみならず、油彩画や立体表現までも加えた展示物により、現実には存在しない幻想的な建造物の世界で心を遊ばせる展覧会です。
『魔性の女挿絵展』
2013年5月5日(日)、弥生美術館で標記展覧会を観ました。
弥生美術館といえば、高畠華宵コレクションがその元となっていて、華宵が活躍した時代やジャンル(挿絵、イラスト)に関連した企画展を開催しているとても個性的な美術館です。
その弥生美術館で、2013年4月4日(木)~6月30日(日)の会期で開かれているのは、文芸作品のうちでも谷崎潤一郎の「痴人の愛」や「刺青」、泉鏡花の「高野聖」、江戸川乱歩の「黒蜥蜴」などのような、官能によって男を惑わし、破滅させる妖女や、美のためには殺人をもいとわぬ悪女などを扱った作品の単行本や文芸誌などに使われた挿絵の展覧会です。
上記の近代文芸だけでなく、玉藻の前や清姫、八百屋お七など平安や江戸の女性、サロメのような外国の女性、さらには平塚らいてうや松井須磨子のような奔放に生きた実在の女性なども扱われていました。
参考パネル展示として、現在、東京藝術大学大学美術館で開催中の『夏目漱石の美術世界展』に出品されているというウォーターハウスの「人魚」もありました。
『―妖怪奇譚 II― 金子富之展』
2013年5月5日(日)、日本橋高島屋美術画廊Xで標記展覧会を観ました。会期は2013年4月24日(水)~5月13日(月)とちょい短め。
一昨年のほぼ同じ時期にこの場所で、ある個展が開かれました。題して『―妖怪奇譚― 金子富之展』(会期:2011年5月25日(火)~6月13日(月))。
本展はその第2回目というわけです。前回の展示作品もかなりの大判だったんですか、今回さらに大きくなってます。そのためメインの展示作品が「世界蛇」「炎の擁護者」「ゴライアス・タイガー」の3点。
それぞれの絵の主題は以下のとおり。
- 「世界蛇」は北欧神話のヨルムンガンド
- 「炎の擁護者」はシベリア・ヤクート族の英雄叙事詩オロンホに出てくる悪魔
- 「ゴライアス・タイガー」はアフリカに実在する巨大魚ムベンガ(ゴライアス・タイガーというのはムベンガの通称)
その他に小さい作品が10数点。そして前回同様、大学ノートに書かれた制作メモがびっしりと貼られており、今回も壮観です。
全体的に、妖怪それ自体をテーマにしたものが減って、海外の神話・伝説ものが増えているようです。
前回の感想で、水木しげるフィルターが濃すぎるんじゃないかとの危惧を表明しましたが、すいません、私の目が節穴でした。
『オディロン・ルドン ―夢の起源』
2013年5月4日(土)、損保ジャパン東郷青児美術館で標記展覧会を観ました。
日本でのルドン人気はなかなかのもんですよね。
つい去年も三菱一号館美術館で個展が開催されたのは記憶に新しいことです。もうちょっと時間を遡れば bunkamura ザ・ミュージアムでも「ルドンの黒」というタイトルで2007年7月28日(土)~8月26日(日)の会期で個展が開催されたことが思い出されます。
また一昨年、上野で開催された二つの展覧会もすぐさま思い浮かぶ。
東京藝術大学大学美術館で2010年10月23日(土)~12月5日(日)の会期でおこなわれた「黙示録―デューラー/ルドン」と、同時期に国立西洋美術館で2010年9月18日(土)~11月28日(日)の会期でおこなわれた「19世紀フランス版画の闇と光 ―メリヨン、ブレダン、ブラックモン、ルドン」。
このようにルドンの展覧会は頻繁に開催されているわけですが、本展ではそれらのルドン展とは一線を画する重要な提示があります。