『魔性の女挿絵展』
2013年5月5日(日)、弥生美術館で標記展覧会を観ました。
弥生美術館といえば、高畠華宵コレクションがその元となっていて、華宵が活躍した時代やジャンル(挿絵、イラスト)に関連した企画展を開催しているとても個性的な美術館です。
その弥生美術館で、2013年4月4日(木)~6月30日(日)の会期で開かれているのは、文芸作品のうちでも谷崎潤一郎の「痴人の愛」や「刺青」、泉鏡花の「高野聖」、江戸川乱歩の「黒蜥蜴」などのような、官能によって男を惑わし、破滅させる妖女や、美のためには殺人をもいとわぬ悪女などを扱った作品の単行本や文芸誌などに使われた挿絵の展覧会です。
上記の近代文芸だけでなく、玉藻の前や清姫、八百屋お七など平安や江戸の女性、サロメのような外国の女性、さらには平塚らいてうや松井須磨子のような奔放に生きた実在の女性なども扱われていました。
参考パネル展示として、現在、東京藝術大学大学美術館で開催中の『夏目漱石の美術世界展』に出品されているというウォーターハウスの「人魚」もありました。
いやぁ大正浪漫やアール・ヌーボー、アール・デコなどのイラストを見ていると心が躍りますね。
そして橘小夢ですよ冒頭からいきなり。松濤美術館で開催された『大正イマジュリィの世界』で観た「水魔」との嬉しい再会や「刺青」の挿絵との出会いなど、妖しげな作品群にどっぷり浸ることができました。
ところで『大正イマジュリィの世界』のときも書きましたが、京極夏彦「文庫版 絡新婦の理」のカバーに使われている、荒井良による張り子の女郎蜘蛛は、この「刺青」の挿絵を踏まえたものなんですかねぇ。
それはさておき、とてもすばらしい展覧会だったので、公式図録である「魔性の女挿絵集」も、一も二もなく買った次第。さらに後日、本展で扱われていた岩波文庫「サロメ」と中公文庫「人魚の嘆き・魔術師」も、辛抱たまらず買ってしまいました。
なお、読売新聞2013年5月13日(月)付夕刊8面の「ブンコに訊け」というコラムには、谷崎潤一郎は自作の挿絵に対しても気を遣い、今も中公文庫版は豪華な挿絵入りとなっている云々、ということが書かれています。
どれくらい豪華か、このラインナップを見よ。
さらにこの7月「猫と庄三と二人のをんな」が昭和12年創元社版にあった安井曾太郎の挿絵入りで刊行されるとのこと。
谷崎潤一郎作品というと新潮文庫も充実していたように思いますが、このようにして見ると、中公文庫の方が魅力的ですなぁ。
また同コラムには挿絵入文庫として、前述のビアスリーによる「サロメ」と同じく岩波文庫から永井荷風の「墨東綺譚」(挿絵:木村荘八)も紹介されています。
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