『維新の洋画家 -川村清雄』

2012 / 11 / 26 by
Filed under: 展覧会日記 
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『維新の洋画家 -川村清雄』

『維新の洋画家 -川村清雄』

2012年11月23日(金)、江戸東京博物館に標記展覧会を観に行きました。

当初、あまり興味がなかった本展ですが、Twitter の TL でずいぶん評判が良かったのと、日曜美術館アートシーンで紹介されていたのを見て、これはちょっと観といた方がいいかも、と考え直した次第。
で、実際に訪れてみて、観といて良かったと切実に感じました。日本にはスゴイ画家がいたんですねぇ。

突拍子もないと思われるかも知れませんが、展示された数々の絵を観ていて、スチームパンクを想起しました。
あり得たかも知れない日本油彩画の未来を観た、とでも言いますか。

スチームパンクというのは、まぁ説明するまでもないと思いますが、SF の1ジャンルです。
現在、我々の文明の動力源は電気ですが、スチームパンクは、産業革命以降の蒸気機関が発展を続け、蒸気でコンピュータが動いたりしているという、あり得たかも知れない世界を舞台にしたレトロフューチャー物語ですザックリ言うと。

現在、日本画壇における油彩画は、黒田清輝を始祖とする西洋油彩画を引き継いだものです。しかし、この幕末から明治に生きた川村清雄という画家の油彩画は、それらとはまるで違います。
金箔地に油絵具で描いた屏風や掛け軸など、現在の油彩画を見慣れた我々からすると、かなり違和感を覚える作品だとは思いますが、その違和感は快い違和感です。

いやむしろこのスタイルは、和式油彩画として、浮世絵以外で、世界に伍するジャンル足り得たんじゃないか、というワクワク感すら抱きました。

そして歴史に if を持ち出しても如何なものか、と言われそうですが、たとえ傍流でも現代日本画壇に川村清雄の系譜が生き残っていたら、その多様性ゆえに、画壇はさらに豊饒な世界になっていたんじゃないだろうか、というちょっと残念な感じも抱かされた展覧会でした。

どの作品も興味深いものですが、1点を選ぶとすると、やはり「建国」ですかねぇ。
これはフランスから発注を受けたもので、現在オルセー美術館に所蔵されている絵とのこと。
ニワトリが大きく描かれた、極端に縦長の絵で、画材は油絵具、魂は日本画といった趣を持っています。
このニワトリは常世長鳴鳥だそうです。天岩戸で重要な役割を果たしたニワトリですね。

この「建国」の下絵も展示されておりまして、こちらは、天岩戸が引き開けられ、天照大神が世界を再び照らす場面そのものでした。縦横比は西洋画によくある横長のもの。この下絵のほとんどの部分をばっさり切って、ニワトリのアップだけを描いたのが本作というわけです。

絵柄としては下絵の方が好みですが、日本人が西洋に向けて描いた油彩画ということを考えると、この本作の方がより日本人が描いた絵であることのアピール性が高いかもなぁ、と思うと、これだけ大胆にカットしたものの方が正解なのかも知れませんね。

会期は2012年10月8日(月)~12月2日(日)。もうすぐ終わりなので急げ。



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