『ファインバーグ・コレクション展 ―江戸絵画の奇跡―』(1)

2013 / 07 / 08 by
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『ファインバーグ・コレクション展 ―江戸絵画の奇跡―』

『ファインバーグ・コレクション展 ―江戸絵画の奇跡―』

2013年7月5日(金)、江戸東京博物館で標記展覧会を観ました。

本展覧会は2期制で、前期が2013年5月21日(火)~6月16日(日)、後期が2013年6月18日(火) ~7月15日(月)。
なかなか時間が取れなくて、終了間際の鑑賞となりましたが、前期も何とか時間を捻出すべきだったなぁ、とちょっと後悔。
それはともかく、印象に残った絵6点について徒然なるままに。

谷文晁秋夜名月図
サントリー美術館では2013年7月3日(水)~8月25日(日)の会期で『谷文晁』展が開催されているわけですが、自分としては、その予告編的な感じで観た次第。タイムリーでしたねぇ。
絵そのものは、月を表わす円の右下の方が輪郭線のように濃い墨になっており、それが惜しいかなぁ、と感じました。
周りを墨でぼかし、月の部分だけを塗り残すという点がもっと徹底されていればなぁ、と。
一方、シルエットで表わされた風になびく草はとても良いですね。

鈴木松年月に雲図
本展で最も惹きつけられた絵。
その陰影のつけ方により、描かれた月が、円盤ではなく球体に見えました。
その途端、月球上に経線と緯線を幻視した私です。そして絵に描かれた白い月が月球儀に感じられたと思ったら、そこから魂はさらに高みに昇り、ダンテ「神曲」の中で述べられている、同心円状に配置された諸遊星天や至高天といった宇宙観までが視えました。
これも一種の神秘体験と申せましょうか。東洋の掛軸の絵から西洋の宇宙観を感じ取るという、かなり希有な体験をしました。
ところでこの絵、会場で入手した紙のリストを見ると、当初前期にしか展示されない予定だったぽいですね。この絵に出会えた幸運を天に感謝したいです。

竹内栖鳳「死んだ鶴図」
丸山派や明治以降の日本画の写実とは、またちょっと違って感じられる、その鶴の羽根の写実志向の表現に眼が惹きつけられました。

伊藤若冲「松図
墨痕鮮やか、というやつですね。筆の勢いが実に力強い。それによって生み出された墨のかすれに萌える。

葛蛇玉鯉図
何か凄まじいオーラを放って、遠目から力づくで私の目に飛び込んできたのは、この絵です。
近寄ってまじまじと見つめると、遠目から感じられたほど強いインパクトは受けませんでした、それでも惹かれる絵であることは間違いない。
ところでこの葛蛇玉という絵師、現在確認されている作品はたったの6点だそうじゃないですか。
そのうち1点はこの展覧会で観ることができ、もう1点は現在、東北を巡っている『若冲が来てくれました プライスコレクション 江戸絵画の美と命』で観ることができるという。
たった6点しかない江戸時代の日本人絵師の作品の2点を、西洋人コレクターの展覧会で日本人が観るというこの現実。
巡り合わせと言いますか、何の因果かと言いますか、実に複雑な気分になりますなぁ。いやここは素直にファインバーグさんとプライスさんに感謝すべきですね。ありがとうございます。

葛飾北斎「源頼政の鵺退治図
頼政の頭上、白い空間を浸食する黒雲の滲みが良い。
妖怪クラスター的にも鵺退治という点で見過ごせないものですが、鵺それ自体の姿を描かなかったことが残念でもあり、また、鵺をくすんだ二条の赤い線で表わしたという斬新さに心を打たれたりもしたり。
なんともアンビバレンツな気分にさせる絵です。

そして最後に触れたいのは、曾我蕭白「宇治川合戦図屏風」ですが、長くなるので稿を改めて述べることとします。



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