『大妖怪展 ―鬼と妖怪そしてゲゲゲ―』

2013 / 07 / 11 by
Filed under: 展覧会日記 
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『大妖怪展 ―鬼と妖怪そしてゲゲゲ―』

『大妖怪展 ―鬼と妖怪そしてゲゲゲ―』

今夏、首都圏では3つの美術館で妖怪をテーマとした展覧会が実施されます。
まず口火を切るのが、三井記念美術館の標記展覧会です。2期構成で、前期が2013年7月6日(土)~8月4日(日)、後期が2013年8月6日(火)~9月1日(日)。その初日である2013年7月6日(土)に観に行きました。

なお、他の2つというのは、横須賀美術館『日本の「妖怪」を追え!』展(会期:2013年7月13日~9月1日)と、そごう美術館『幽霊・妖怪画大全集』(会期:2013年7月27日~9月1日)ですが、これらの3展覧会は相互割引ありだそうですよ。コンプすべし。

さて、本展の差別化ポイントはやはり能面でしょう。特定の演目にしか使用されないというレアな面も展示されています。さすがは三井財閥! 個人的には前期のみ展示となる猩々面が気になりました。

それにしても《柳田國男についての解説パネル》、《水虎考略》、そして《百種怪談妖物双六》と《新板化物づくし》がひとつの展覧会で並んでいるというのは、なんというか、感慨深いものがありますなぁ。

民俗学、本草学、そして風俗史。妖怪に接しているすべての分野を巻きこんで、まるでごった煮のよう。どこがポイントなんだか分かりづらくなっているようにも思えますが、この捉えどころの無さこそが妖怪なんですよね。

まぁ、集客目的で、楽しそうなのをなんでもかんでも、ってことなら、それはそれでひとつの企画意図ですが、百鬼夜行絵巻に絞るとか、錦絵に絞るとか、江戸の妖怪おもちゃに絞るとか、ある程度、狭い範囲で企画を立てた方が、美術館の展覧会としては良さそうな気もします。民俗学や本草学の範疇は博物館に任せて。

美術館が開催する妖怪展はまだ試行錯誤の段階と考えるべきなんでしょうかね。散漫になったり、有名どころやビジュアルインパクトに頼りがちになるのも致し方ないのである、と。

まぁ《画図百鬼夜行》と《桃山人夜話》は鉄板としてチョイスせざるを得ないですよねー。

あと聞くところによると、3つの妖怪展すべてで歌川国芳《相馬の古内裏》が展示されるそうじゃないですか。巨大髑髏モテキ到来ですな!
本来、1点ものであるファインアートを扱うのが美術館だと思うんですが、こういう現象が発生しているのは、なかなか興味深いなぁ、と感じました。
複製芸術である版画だからこそ可能なこと。そしてビジュアルとしての妖怪(風俗史、演芸史の範疇)は複製芸術を生息場所にしているということですね。つまり江戸の出版文化こそが、妖怪の基盤とでも言いますか。

あと、オレ的鑑賞視点として設定したのは、水木しげる妖怪画の元ネタがどれくらい展示されているかということ、でした。
最終展示室を水木展示室としているこの展覧会。そこに至るまでに見てきた展示物に描かれていた妖怪が、水木しげるの手にかかるとどのようになるのか、ということがちゃんと分かるような妖怪の選択がなされていて、ああ、やっぱり水木しげる先生を持ってくるならこうだよねー、と、頷いたり、膝を打ったりした次第。

なお私、民俗学における妖怪のみを妖怪と認識し、他の分野の妖怪は妖怪とは考えない人間なんすよ。
近年、風俗史・演芸史的妖怪を扱った研究書が多く出版されるようになり、以前、講談社学術文庫「江戸滑稽化物尽くし」などを読みました。そしてつい先日刊行された角川ソフィア文庫「江戸の妖怪革命」を今まさに読んでいるところなんですが、本展を鑑賞するにあたって、そういう本がかなり参考になったことをご報告いたします。



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