『多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者』

2012 / 06 / 13 by
Filed under: 読書日記 
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シュボーン・ロバーツ・著、糸川洋・訳
日経BP社
2,940円

数学者ハロルド・スコット・マクドナルド・コクセター。生きているうちから伝説であり神であった幾何学者。この本はそのコクセターの評伝です。

数学クラスター的には絶対に外せないコクセターですが、アート・クラスター的にもまんざら無関係とはいえない人なんですよね。と言うのも、コクセターはM.C.エッシャーの創作と、とても深い結びつきがありまして、その辺りが、第11章 ”M.C.エッシャーとの「コクセタリング」”(P277~300)に書かれています。

コクセターとエッシャーはお互い交流していたんですが、エッシャーがコクセターから送られた論文にある挿絵を見たときエウレカが訪れました。
その挿絵とは双曲幾何学のポアンカレ・ディスク・モデルの図で、それに触発されて生まれたエッシャー作品が「円の極限I」です。円の極限シリーズはその後IVまで作られます。

ポアンカレ・ディスク・モデルの図に、エッシャーが補助線や補助点を加えたものが、図版として掲載されており、これはなかなか興味深いものでした。
ちなみにそれは "The Mathematical Side of M. C. Escher"(PDF)で見ることができます。真ん中へんにある Figure 7 がそれ。
また、ポアンカレ・ディスク・モデルの図をエッシャーはどのように解析して「円の極限」を描いたのかは、"How Did Escher Do It?" というページで分析されています。
エッシャーはどのようにしてCircle Limit I~IV を描いたのか?」(PDF)は上記ページを参照した日本語による解説です。

この章には、エッシャー以外にも、コクセターと交友のあった作り手が2人紹介されています。

1人はイギリスのジョン・ロビンソンという彫刻家。
この彫刻家を私、初めて知ったんですが、中空三角形の組み合わせた作品や複数の環を撚ったような作品など、幾何学性の高い彫刻を作る作家らしい。
"Symbolic Sculpture"(公式サイト)の gallery 1 ~ 4 で彫刻作品の写真が見られます。

もう1人はハドソンリバー精神医学センターの入院患者のジョージ・オドム。
三次元の幾何学模型を数多く作り、それをコクセターに送り続けたとのこと。

コクセターとそれぞれの芸術家は、お互いに影響を与えあって、コクセターは論文を、芸術家は作品を発表するという関係だったそうです。

この本を読んで、数学とアートのコンビネーション事例についての知見を得ることができました。



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