『豆腐小僧その他』
京極夏彦・著
角川文庫
660円
映画「豆富小僧」公開に併せて、豆腐小僧関連で京極夏彦による文庫がもう一冊出ています。それが「豆腐小僧その他」です。
最初に「小説 豆富小僧」という作品が収録されています。これは「豆富小僧(角川つばさ文庫)」の再録とのこと。
で、この小説、映画「豆富小僧」とずいぶん似通っています。現代が舞台でジュブナイルなところとか、天候管理システムが出てくるところとか、実はこっちのが映画原作なんじゃないの? と思えるような筋運び。まぁ実際の展開はずいぶんと違うんですが。
「豆腐小僧双六道中ふりだし」と「小説 豆富小僧」を足して2で割ったのが映画原作という印象です。この「小説 豆富小僧」はどういうポジションの作品なんですかね。映画シナリオを元に原作者自らが書いた、逆輸入的な小説ってなイメージでしょうか。いまいち、そのあたりの関係性が分かりづらい。
それ意外に収録されているのは「京極噺六儀集」からの数編。「文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし」に出てくる妖怪から、主役の豆腐小僧、メインキャラクターである狐と狸、そして小説ではそれほどでもないが、映画ではキーパーソンになる死神、に関わる話を抜粋しカップリング(まぁほとんどなんですが)。
冒頭の「小説 豆富小僧」以外はどれもなかなか面白い。
個人的に気に入ったのは「狐狗狸噺」。人を騙そうとする狐と狸、人を食らおうとする山犬の三匹が一人の人間・太郎冠者を囲んで三すくみ的な状況になる、そして三匹の魔物に囲まれながらも、貧乏ゆえに騙されも食われもせず幸せに浸るという皮肉が味わい深い。狂言の舞台である中世に、現代の不景気を反映させているわけですね。
ところでこの文庫本のタイトル「豆腐小僧その他」。
「小説 豆富小僧」とその他いろいろな作品を集めた本という意味で、そのまんまなタイトルですが、町の妖怪好きにとってはヨダレが出そうなタイトルですなぁ。
「豆腐小僧その他」ってのは本歌取り。その元ネタは柳田國男「一目小僧その他」。その昔、角川文庫から出ていた本です。現在は残念ながら絶版。
「一目小僧その他」がかつて納められていた角川文庫から出る本だから「豆腐小僧その他」。ヤバい萌える。
やっぱ京極先生は外さないなぁ!
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