『文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし』

2011 / 05 / 26 by
Filed under: 読書日記 
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京極夏彦・著
角川文庫
940円

先に映画「豆富小僧」について触れましたが、その原作はこの本だという。
ずいぶん前に買ったんですが長いこと積読でした。映画も観たことだし、この際原作も押さえとくか、ってなわけで、先日読了した次第。

でもこれ本当に原作なの? 話全然違うじゃん。後述しますが、同じ著者による「小説 豆富小僧」ってのもあります。が、これも原作とは言い難い。

映画はずいぶんとジュブナイルなシナリオでしたが、原作本はあにはからんや、いつもの京極節炸裂で萌える!
体裁上、幕末を舞台とした物語になっていますが、その実態は著者による「妖怪とは何か」という学術論文です。

京極夏彦先生と言えば「姑獲鳥の夏」で彗星の如く現れ、あれよあれよという間にスターダムに登りつめた作家ですが、それ、およびそれ続く京極堂シリーズはすべて、推理小説の体裁を借りた妖怪解釈についての学術論文と呼ぶべきものでした。
京極堂シリーズは1冊につき、少数の妖怪についての解釈しか述べられていません。今のところの最新作「邪魅の雫」にいたっては、邪魅についての解釈が述べられていないという、巻を追う事に不完全燃焼な思いをしてたわけですが、この「豆腐小僧双六道中ふりだし」は一味も二味も違う!
鳴屋や死神、化け猫、火の妖怪各種(含む人魂)、狸や狐に至るまで、事象の説明、けじめ、思いの反映、神仏との習合などなど、各種解釈がなされており、実に萌える!

井上円了「妖怪学」と併読すれば、妖怪についての理解が深まること間違いなし。妖怪好きのハートを鷲掴みにして離さないステキ本。同じ京極本では「妖怪の理 妖怪の檻」も併せて読みたい。

京極先生は外さないなぁ。

ところで原作読まずに映画を観たわけですが、ひとつ疑問がありました。
敵は八百八狸です。八百八狸の首領の名は隠神刑部いぬがみぎょうぶ。ちなみに「平成狸合戦ぽんぽこ」にも出てきます。しかしこの映画では、なぜか首領格の狸の名前は芝居者狸しばいものだぬきとなっていた。
これは一体どういうわけだろうと疑問だったんですが、この小説を読んで分りましたよ。
芝右衛門狸しばえもんだぬきだったんか。
芝右衛門狸は後に芝居の神として祀られ、芝居者狸しばいもんだぬきとも呼ばれるようになったそうな。「しばえもん」と「しばいもん」か。
これでやっと胸のつかえがとれた。



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