『遠藤彰子展』

2014 / 01 / 27 by
Filed under: 展覧会日記 
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『遠藤彰子展』

『遠藤彰子展』

年の初めのためしとて、いろいろな美術館のウェブサイトで、今後開催される展覧会をチェックしていたら、上野の森美術館のホームで目が釘づけになりました。とてつもない土俗的なパワーに溢れかえった、大迫力の絵が表示されていたのです。

それが2014年1月18日(土)に観てきた標記展覧会。会期は2014年1月15日(水)~1月28日(火)のたった2週間。明日ですべてが終わる。短い。短すぎる。

栴檀は双葉より芳しいと言いますが、小学2年生のときだかの絵が展示されておりまして、その色遣いが実に鮮烈。ただ者じゃないオーラを発していました。それはさておき、この方の現在までの画業を大きく分けると3つになるんですかね。

  1. 「楽園」と題された作品に代表される初期作品群
  2. トポロジカルな遠近感を持った作品群
  3. 森羅万象の生命をテーマとした現在の作品群

いずれの期も、色彩や対象のデフォルメの仕方、画面の稠密性など、土俗的パワーに噎せかえるステキ作品群でしたが、私が特に感銘を受けたのは2番目のトポロジカルな遠近感を持った作品群。

展覧会冒頭に掲示された当美術館長による「挨拶」に、以下のようにありました。

遠藤さんは、あるとき「見上げる空と見下ろす空を、同一の画面に表現したら……」と考え、(中略)今回展示される《見つめる空》1989年が誕生しました。

「見下ろす空」というのが、何のことか理解できなかったんですが、並んでいる作品の現物をいろいろと観て、空から地面を見下ろすことだというのが分かりました。

先行事例としては、おそらくエッシャーの "high and low" が一番近い方向性を持っているんじゃないかと思います。一つの画面の中で鳥瞰と蛙瞰を混在させるというものでした。
エッシャーのは超巨大魚眼レンズで見たといった趣で、理詰めで描いている印象を受けますが、遠藤彰子さんの描くそれらの絵画は、感性でもって筆の赴くままに描いているとでも言いましょうか、描かれた世界がメビウスの輪を思わせる奇妙な捩れ方をしています。

このトポロジカルに歪んだパースペクティブを効果的に魅せるため、画面の中には、部屋の床面やバルコニーのような高所にある広場、あるいは鉄道網といった水平構造と、石柱、コンクリート柱、縦長の高層建築物といった垂直構造、そしてそれらを結ぶ階段が、所狭しと入り乱れており、その構築のされ方が非現実的で、まるで夢の中の街並みのような不思議な空間になっています。
その街の中には、インドのガンジス河畔のように蝟集する大勢の人々が溢れかえっており、とてつもない生命力に充ち満ちています。

エッシャーのような硬質で冷たい印象ではなく、石柱や鉄路であっても、大地であっても、触れればぐんにゃりと柔らかく温かく脈打っていそうなその雰囲気には心がときめきます、ざわめきます。

百万言を尽くしても、その素晴らしさは伝えられないので、遠藤彰子さんご本人による公式サイトを訪れてください。

しかし、このような素晴らしい作品群がたった2週間しか人の目に触れないというのは、実に惜しいことですね。



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