『美術にぶるっ! 第2部 実験場1950s』

2013 / 01 / 13 by
Filed under: 展覧会日記 
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『美術にぶるっ! 第2部 実験場1950s』

『美術にぶるっ! 第2部 実験場1950s』

『美術にぶるっ!』という展覧会は、東京国立近代美術館開設60周年を記念して、東近美所蔵品によって編成された、建物の4階から1階まですべてを使った企画展と聞いていました。

しかし1階『第2部 実験場1950s』の第2章早々、鶴岡政彦「重い手」が展示されてて面食ったですよ。

えっ、「重い手」って東京都現代美術館所蔵だよね?

ラベルやリストを見ると、やっぱり都現美所蔵と書いてある。MOMAT じゃなくて MOT じゃん。
他の展示作品についてもリストを見ると、東近美所蔵品だけでなく、日本中のあちこちの美術館や個人から作品が集められているじゃあありませんか。
第1章で展示されていた写真群は、ストレート過ぎる反戦メッセージが好みでないから、作品もリストも見ずに、チラシすら取らずに通過したんで、この時点で初めて気づいたっす(後で戻ってチラシだけは入手しました)。

つまり、この『第2部 実験場1950s』は、東近美にとどまらず、あちらこちらから集められた作品によって、1950年代のアート・ムーブメントを概観するというものだったのですね。
だとすると、この『美術にぶるっ!』を構成する二部は、それぞれ別の展覧会と捉えるべきじゃあないですかね。
そう考えると、1階で企画展(第2部 実験場1950s)、4階から2階で常設展(第1部 MOMAT コレクションスペシャル)という、ふだんの東近美と同じスタイルだったわけだ。

『第2部 実験場1950s』の印象を一言でいうと「絶望美術館」といったところでしょうか(西岡文彦「絶頂美術館」のパクリ)。

浜田知明のエッチングが5点展示されていましたが、この絶望感は異常。
しかもその対面に、これまた鬱誘発度が高い、河原温「浴室シリーズ」というのが、何とビックリ、28枚も展示されている。
通路の両側からこんな虚無オーラを照射され続けたら、もう死ぬしかない、ってくらいのやるせなさに苛まれるじゃないですか。
他にも、池田龍雄とか山下菊二とか、暗澹たる作品群に囲まれ続けた私ですが、その間ずっと嬉々としていたことを、ここに告白します。それもどうかと我ながら思う。

でもこの昭和のジメジメ感はイイですねー。私はもうちょっと後の世代なんですが、いやー懐かしいなぁこの感じ。
第1部 MOMAT コレクションスペシャル』も、もちろん素晴らしかったんですが、個人的には、この無情感溢れる第2部の方が好みです。

ところで、本展のキービジュアルにもなっている、背景が白地に黒線で人物が緑色のやつもそうんなんですが、中村宏のプロレタリア絵画っぽいのが何枚か展示されています。
この人って、デモーニッシュで禍々しい、蒸気機関車に乗った一つ目セーラー少女を描く人ですよねぇ。元々はこういう絵を描いていたのか! という新知識も与えてもらった展覧会でした。



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