『ブルーノ・ムナーリ展』
今日(平成22年7月18日)は、平成22(2010)年6月26日(土)~8月29日(日)の会期で開催されている標記展覧会を見てきました。場所は横須賀美術館。
ブルーノ・ムナーリといえば世間的な認知は絵本作家になるんですかね? しかしウチにいらっしゃるような方々にとってはプロダクトデザインとかグラフィックデザインとか発想法とか、そういった側面で認知されている作家だと思います。
「モノからモノが生まれる」が有名ですよね。
会場は以下の5章で構成されています。
- 機械とアート -ムナーリの原点-
- アートによるコミュニケーション -グラフィックワークを中心に-
- 空間を豊かにするアート -彫刻、オブジェ-
- 空間を豊かにするアート -プロダクトデザイン-
- 手のひらのアート -ムナーリの本たち-
今となってはすっかりコモディティとなってしまった感がありますが、いろいろと楽しい展示が満載でしたよ。
「機械とアート -ムナーリの原点-」
このコーナーでは『ゼログラフィーア』と『役にたたない機械』に注目。
『ゼログラフィーア』は、コピー機の読み込み中に原画を動かすことで、何でもない写真を歪んだ画像にして、一期性の作品にしてしまう行為。
そもそもは、マニュアルどおりに機械を使う(=機械に使われる)ではなく、人間が自らの意志で機械を使う、ということから、このような行為が生まれたとのこと。まぁコンセプチュアル・アートなわけですね。
『役にたたない機械』は要はモビール。モビールは今じゃすっかり玩具だけど、そもそもはアート作品ですからね(ムナーリの創始じゃないけど)。
「アートによるコミュニケーション -グラフィックワークを中心に-」
このコーナーでは『ムナーリのフォーク』と『ペアーノの形のつながり』に注目。
『ムナーリのフォーク』は前述した「モノからモノが生まれる」の表紙に描かれている、四つ股を指に見立てたフォーク。なかなかカワイイ。
『ペアーノの形のつながり』は、イタリアの数学者ジュゼッペ・ペアーノが提唱した「ペアーノの曲線」を視覚化したものとのこと。
「ペアーノの曲線」というのは「すべての曲線は直線である」という理論だそうで、正方形の中を埋め尽くす曲線の例だとか。まぁ理論はワケわかんないんですが、要は幾何学的に美しい模様が描かれるというわけです。
ペアーノの曲線については以下あたりをご参考に。
「空間を豊かにするアート -彫刻、オブジェ-」
そしてこのコーナーの展示物がオレ的にかなりツボりました。
『折りたたみのできる彫刻』『フィリページ』『フレクシー』『くりかえしの構成』『凹凸』に注目。
『折りたたみのできる彫刻』は切り込みだけで構成された飛び出す絵本といったような作りの作品。シンメトリーが美しい。
それの亜種である『旅行のための彫刻』というのにとりわけ感嘆しました。
作りは『折りたたみのできる彫刻』と同じ切り込みを入れて折ったもので、こちらは紙製です。
作品のコンセプトは、持ち運こびできるアート。例えば旅先でホテルの部屋などに飾って、レディメードの空間をマイカスタムな空間に変えることを目的としているという。
実態は、ただ切り込みを入れて折り畳んだ紙に過ぎませんが、生活に潤いを与えるとても素晴らしい哲学だと感じました。
『フィリページ』は紐と金属パイプで作られ、重力と構造的均衡によって完成する吊り下げ式の彫刻。
モビールの発展形態といったところでしょうか。
『フレクシー』は6本のワイヤーと台座で構成された立体造形。
台座に穴があり、ワイヤーをその穴に差し込むことで、ユーザが自由な形に作るもの。
『くりかえしの構成』は単位ユニットを組み合わせて複雑な形状を構成する彫刻。
『凹凸』金網を丸めて吊してその影を鑑賞するもの。作品が風で揺らいだりすると、影も美しいモアレを描くというものです。
本展覧会のウェブページでは、作品の写真がほとんどありませんが、ググったところ、上で触れた多くの作品を、2008年に川崎市民ミュージアムで開催されたというブルーノ・ムナーリの展覧会に関わるウェブページで見つけることができました。
- MUNARI50_ムナーリ50 発明家(『ゼログラフィーア』『役にたたない機械』)
- MUNARI50_ムナーリ50 藝術家(『旅行のための彫刻』『くりかえしの構成』『折りたたみのできる彫刻』『フレクシー』『凹凸』『フィリページ』)
プロダクトデザインのコーナーの展示物もまぁ良かったんですが、最後のコーナーではブルーノ・ムナーリの著作物が展示ケースのガラス内だけでなく、実際に手に取って閲覧できるようになっていました! 購入欲を煽るその態度に萌え!
そんなわけで、数冊読んで、「ファンタジア」と「デザインとヴィジュアル・コミュニケーション」の2冊を買いました。
でも本当は↓の5冊全部欲しかったの。
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