『アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教/肖像/自然』

2010 / 11 / 16 by
Filed under: 展覧会日記 
Bookmark this on Delicious
[`livedoor` not found]
[`yahoo` not found]

『アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教/肖像/自然』

『アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教/肖像/自然』

11月13日(土)に見てきた3つの版画展その2は、『19世紀フランス版画の闇と光』と同じ会場である国立西洋美術館で2010年10月26日(火)~2011年1月16日(日)の会期で開催されている標記展覧会について。

この展覧会と東京藝術大学大学美術館で開催中の『黙示録―デューラー/ルドン』は、オーストラリアにあるメルボルン国立ヴィクトリア美術館が誇るデューラー・コレクションが展示の核になっている姉妹展です。

デューラーは、芸術において重要なのは「宗教」「肖像」「自然」の3つの主題であると考えていたそうで、本展覧会はそれに沿った3章立ての展示になっています。

第1章の「宗教」では、キリスト受難を描いた連作版画「大受難伝(木版画)」「小受難伝(木版画)」「銅版画受難伝」を主として、受胎告知や聖母像、トリニティといったキリスト教にまつわるいろいろな場面の版画が展示されています。

この中で興味を惹いたのは展示番号95「聖三位一体」
父と子と聖霊以外に妙なものが描かれてる。画面下方の雲の中、髭を伸ばした厳つい老人の首が4つ飛び回り、口を尖らせて息を吐いています。明らかに天使とは異なる図像ですが、解説によるとこれは風の神とのこと。
キリスト教に風を司る「神」は存在しません。これはギリシア神話に出てくる東西南北の4風神を踏まえたキャラクターなんだと思いますが、この異教的ペイガンな感じ、良いですねぇ~。

あと、いろいろな版画で「羽根を生やした幼児の首」が飛び回っている図像がありました。首の切り口から二枚の鳥の羽が生えているグロキモいデザインですが、これってケルビムなのかな。

「ウルリヒ・ファルンビューラー」

「ウルリヒ・ファルンビューラー」

第2章の「肖像」ではデューラーが手がけた肖像版画が展示されています。なんでもデューラーは肖像画に力を入れた版画家だったとか。

ここで目を惹いたのは展示番号103「ウルリヒ・ファルンビューラー」
ふつう木版画は彫った部分の黒(暗)と紙の白(明)の2色なわけですが、これは「キアロスクーロ」というもので、複数の版を使って明暗を出す手法で摺られたものとのこと。二つの版を使っているらしく、黒い線、白い地に加えて、中間色の灰色の面が陰となっています。
浮世絵は多色摺りでカラフルなのが一般的ですが、古い西洋版画で多色摺りは初めて見ました。

第3章は「自然」と題されていますが、「宗教」「肖像」に入らないものはここにまとめました、って感じで、何かとりとめがない感じ。

ここで気になったのは展示番号125「バッタのいる聖家族」
気になったのは版画自体じゃなくてキャプション。以下のような記述です。

画面右隅の虫がトンボなのかバッタなのか判然としませんが、

確かに、長い触角と羽根の拡がり方、長すぎる胴がヘンだけど、後脚の形状を見ればバッタ以外に同定不能。てゆーかトンボには更に見えん。誰ですかこんな文章書いたのは。国立の機関なんだから、やっちゃった記述は避けて欲しいっす。

同じく版画自体じゃなくタイトルに違和感を覚えたのは、展示番号126「3匹のウサギがいる聖家族」
原題は "The Holy Famiry with Three Harers" で普通に訳すと「3羽の野兎と聖家族」。
この邦題はどのタイミングでつけられたものなんでしょうかね。ウサギを数える単位は「匹」じゃなくて「羽」なので気になった。

展示番号137「ランツァーの雌豚」
お、コレ見たことあるぞ。昔、立風書房という出版社から出ていた「いちばんくわしい世界妖怪図鑑」という捏造妖怪本に「ランスター」というオーストリアの妖怪としてでっち上げられていたヤツじゃん。
原題は "The Monstrous Sow of Landser". 要するに奇形の豚を描いたものってことなのかな。

そして展示番号138として、かの有名な「」が展示されていました。博物学関係の本だと必ず出くるヤツ。この展覧会で一番萌えたのがこの「犀」。もうこれが見られただけでも充分満足っす。



Comments

Tell me what you're thinking...
and oh, if you want a pic to show with your comment, go get a gravatar!





WP-SpamFree by Pole Position Marketing