『ゲゲゲ展』

2010 / 08 / 22 by
Filed under: 展覧会日記 
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『ゲゲゲ展』チケット売り場

『ゲゲゲ展』チケット売り場

佐藤雅彦先生がその著書の中で次のように述べてらっしゃいます。
以下は「毎月新聞(中公文庫)」の第5号「ブーム断固反対」という章からの引用です(P41~42)。

個人が、ある商品を「必要」として買う。あるいは「好き」で買う。これはとても健全な消費の形である。
(中略)
それに対しブームにおける消費はだいぶ違ってくる。まわりの人が持っているから、マスコミがものすごく取り上げているから、といった理由が動機づけの多くの比重を占めてくる。
(中略)
ブームとは扇情的な力による消費の爆発的拡大である。そのとき、個人個人は、その商品の本来の価値よりも、「その商品を手に入れるかどうか」が大きな価値基準となり、人々は手に入れることによってかなりの部分で満足させてしまう。

平成22年8月21日(土)、銀座松屋8階大催事場で開催されている標記展覧会を体験してそのことを痛切に感じました。

『ゲゲゲ展』

『ゲゲゲ展』

10年くらい前、『こわゲ』というタイトルで水木しげる原画展が開催されたことがありました。
当時ももちろん水木マンガは大人気。でもその展覧会はメチャ混みということはなく、ゆっくりと原画を見ることができました。ペンタッチやベタの具合、青鉛筆で塗りつぶしている様子(それはスクリーントーンを貼る目印とのこと)などなど、近くに寄ってじっくり堪能することができたんです。

翻ってこの『ゲゲゲ展』。この混雑ぶりは何か変だと考えざるを得ない。『長谷川等伯展』や『オルセー展2010』と同程度、あるいはそれ以上のはどうなんだと。
まぁ混んでるのは良いんです。それだけ大勢が水木作品を愛しているということなら、水木ファンとしても嬉しいこと。

でも、妖怪の名前も知らなければ、各作品に複数のバージョンがあることすら知らない。あるいは、展示作品の真正面にいながら、それを見ずにケータイ画面に見入る。
おおかた NHK の「ゲゲゲの女房」を見て、ちょっとばかり水木夫妻に興味を持ったという程度のごく薄い関心だからこんな状態なんだろう。なぜ興味もないのに、妖怪画やマンガ原稿の展覧会に金払って入るのか不思議でしょうがない。
まぁ、その程度のライトユーザが実際に水木マンガの原稿を見たことがきっかけで熱烈なファンになった、そんな事例が数多くあったに違いないという空想して自分を慰めることにしよう(実際、会場では感嘆の声が多くあがっていたし)。

恨み辛みはこのくらいで楽しい思い出を反芻するかな。

全部で5部構成になっており、順番に「河童の三平」「鬼太郎」「悪魔くん」「妖怪画」と各種原画の展示が続きます。

水木先生の絵はイイね。「こわゲ」では水木短編の渋さを堪能したけど、今回は三平、鬼太郎、悪魔くんと有名どころを堪能できた。
とりわけ心に沁みたのは「鬼太郎」コーナーで見た、「吸血木」の回の「のびあがり」と、「見上げ入道」の回の「秘法霊界流し」。いずれもその点描の細かさに激萌えする場面です。
しかし、せっかく「鏡合戦」の原稿が展示されていながら「雲外鏡」登場シーンがないのはどうしたことだ。キュレータの猛省を要求します。

そして最後は水木先生ご本人に関するコーナー。年譜や海外旅行の際の愛用の品々などが展示されています。
ミノルタのカメラの傷み具合がスゴかったなぁ。年期入りまくり。
そして仕事道具。NIKKO のGペンや解明墨汁の黒と朱、サクラのポスターカラー(白)などが展示されていました。
これは「こわゲ」でも見れなかったアイテム。

会期は平成22年8月11日(水)~23日(月)まで。最終日は17時閉場だから、もう一度行くのはムリだなぁ。でももっと落ち着いた雰囲気で見たいよなぁ。

ところで NHK 朝ドラの「ゲゲゲの女房」、向井理から全然水木先生を感じなかったんで第1話を見て以後見るの止めました。
NHK スペシャル「鬼太郎が見た玉砕」では香川照之が水木先生を演じていた。さすがは香川照之。仕草や口調などは水木先生そっくりだったんだけど、やっぱルックスがちょっとなー、て感じでのめり込めなかった。

しかし映画版「ゲゲゲの女房」にはちょっと期待しちゃうなー。
水木先生ご本人と比べるとだいぶ痩せているけど、クドカンの扮装は、当時の写真に残る水木先生をかなり忠実に再現していて、今から心待ちにしています。



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