『百花繚乱 女性の情景』

2012 / 09 / 28 by
Filed under: 展覧会日記 
Bookmark this on Delicious
[`livedoor` not found]
[`yahoo` not found]

『百花繚乱 女性の情景』

『百花繚乱 女性の情景』

2012年9月22日(土)に、横須賀美術館で標記展覧会を観てきました。
会期は2012年9月15日(土)~10月21日(日)。

美術のモチーフと女性は切っても切れません。
やはり西洋絵画における裸婦がその代表でしょうが、はるか太古の土器時代に豊穣・多産を祈るため女性像が作られたりしているように、女性の美は、人間の創作における永遠のテーマです。

この展覧会では、日本近現代美術において、女性がどのように美術に描かれてきたのかということが、4つのテーマで展示されています。

第1章は、文学や歌舞伎、歴史上の女性などを描いた「物語、歴史にみる女性」。
第2章は、日本近現代の特徴的な女性像といえばやはりこれ「モダンガール」。
第3章は、画家にとってのファム・ファタルに視点を求めた「画家とモデル」
第4章は、現代に生きる女性表現を多様なメディアで紹介する「現代と女性」。

展示作品は主に日本画。その他に洋画や写真、ポスター。そして明治から大正にかけて発刊された各種女性誌、また作品や作家周辺の情報を知ることができる美術誌などで構成されています。

通覧しての感想。

日本近現代美術における女性像といえばやはり美人画。
美人画といえば鏑木清方と上村松園の2大巨頭は絶対欠かせないと思うんですが、鏑木清方が1点、上村松園はなし、という状況でした。まぁつい最近まで平塚市美術館でやってましたからねぇ。

もうひとり、女性を描いた画家といえば竹久夢二も欠かせないと思うんですが、これもまたなし、という状況。

きっと地方都市の美術館の企画展はいろいろ大変なんだろうなぁ、という印象を抱きました。

そして個別の作品でその中で印象に残った2点について。

まずは第3章で展示されていた絵。
チェアーに浴衣(?)で横たわり、こちらを見つめる女性。その背景は鮮烈な赤で塗りつぶされている。モデル、背景、そしてサイズと、なんとも実に力強い印象の日本画。
タイトルは「コーちゃんの休日」。モデルは越路吹雪とのこと。二人の恋はぁ~終わったのねぇ~、サン・トワ・マミィ~、ですな。
しかしその作者の名前を見てビックリ。なんと小倉遊亀! マジすか!

小倉遊亀「コーちゃんの休日」東京都現代美術館蔵

小倉遊亀「コーちゃんの休日」東京都現代美術館蔵
兵庫県立美術館「小倉遊亀展」案内より(artgene)

小倉遊亀といえば、柔らかい描き方と優しい色使い。ゆるふわ日本画という印象を持っていたんですが、この作品はその印象をひっくり返す、雄々しいとすら呼んで差し替えない荒々しさを持っていませんか? 小倉遊亀がこのような絵を描いていたとは、いやぁ驚きました。
本展では小倉遊亀作品はもう1点展示されており、そちらはいかにも小倉遊亀という絵で、見比べてみると面白いです。

そして第1章。
入り口真正面に日本髪の立ち姿の女性の絵。甲斐庄楠音の「横櫛」。

「ぼっけぇ、きょうてえ」キターッ! でもなんか印象が違うなぁ。「ぼっけぇ、きょうてえ」のはもうちょっと陰影キツかったような気がするんだけどなぁ。

ところでこの日は学芸員によるギャラリー・トークが開催される日だったのです。ふだんは日曜日に行く横須賀美術館に土曜日に行った理由はそれ。

で、学芸員さんの解説によると、この「横櫛」にはほぼ同じ内容の、対と言える作品があるとのことでした。帰宅してネット漁ってみたら「横櫛」は3バージョンあるとのこと。うち2点は実は同一の絵で、描き換え前と描き換え後なんだとか。学芸員さん Twitter で批難してすいませんでした。
今回展示されていたのは広島県立美術館の所蔵品でしたが、「ぼっけぇ、きょうてえ」のは京都国立近代美術館の所蔵品らしいです。

「横櫛」3バージョンはこちらのサイトにあります。左が「ぼっけぇ、きょうてえ」、中央が描き換え前、右が今回展示されていた広島県立美術館所蔵のもの。

しかしよりにもよって甲斐庄楠音とはチャレンジャーだなぁ、と思いつつも、どうせチャレンジするなら、こんなおしとやかなヤツじゃなくて、もっとデロリな絵をチョイスしたら良いのに、たとえば「春宵」とかどうすか、せめて「幻覚」とか、とも感じました。

でも、まぁデロリなヤツだと客ドン引きで、横須賀市民に恐慌を来すかもしれん。そう考えるとこれはこれで、なかなか絶妙なセレクトなのかも知れませんな。
でも、個人的には行くとこまで行くチャレンジ精神を持ってほしかったなぁ。でもそうすると興行的にヤバいだろうしなぁ。でも(以下、無限ループ)。

(2012年9月30日追記)
本文中に竹久夢二の展示がない、と書きましたが、事実誤認であることが2012年9月30日の2回目の鑑賞で判明しました。
と言っても、竹久夢二が描いた絵そのものではなく、ディレクションされた後の雑誌という形態のものです。「婦人グラフ」という雑誌の古い号が数点展示されており、その表紙の絵が竹久夢二のものでした。
壁面にばかり気を取られていてはいけませんね。おおいに反省材料にしたいと思います。



Comments

Tell me what you're thinking...
and oh, if you want a pic to show with your comment, go get a gravatar!





WP-SpamFree by Pole Position Marketing