『福沢一郎絵画研究所 展』

2010 / 12 / 25 by
Filed under: 展覧会日記 
Bookmark this on Delicious
[`livedoor` not found]
[`yahoo` not found]

『福沢一郎絵画研究所 展』

『福沢一郎絵画研究所 展』

2010年12月23日(金・祝)は板橋区立美術館で標記展覧会を観てきました。
会期は2010年11月20日(土)~2011年1月10日(月・祝)。

板橋区立美術館は良いですよね。収蔵方針と企画展はいつも楽しみです。

公式サイトの説明によると板橋区立美術館の収蔵方針は以下の三つから成り立っているそうです。

  • 江戸狩野派を中心とした江戸時代の古美術(近世絵画)
  • 大正から昭和前期までの前衛美術作品(近・現代洋画)
  • 池袋アトリエ村や区内ゆかりの作家などの作品(近・現代洋画)

そして展示活動としては、上記収蔵方針1に対応する「江戸文化シリーズ」や、収蔵方針2および3に対応する「20世紀検証シリーズ」などが、板橋区立美術館単独の企画展として展開しています。
浮世絵に興味があって、シュルレアリスム好きな私としては、他では見られないオンリーワンな企画展には実に辛抱堪らんわけです。
それ以外に巡回企画展として「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」も催されており、これまたなかなか魅力的なシリーズですよ。

『福沢一郎絵画研究所 展』

『福沢一郎絵画研究所 展』

で本展の話。私は絵画など芸術作品を観るのは好きですが、作品そのものが好きかどうかという見方をしています。
作家の生き方だとか、どのような芸術運動があったか、などといった情報にはあまり興味がなく、ヘタすると描いた画家の名前やその絵画自体の名前すら記憶に残らないような、酷い無知ぶりです。

で、今回テーマとなっている『伝説の画塾「福沢一郎絵画研究所」』なるものの存在は初めて知りました。この福沢一郎という画家こそが日本のシュルレアリスムの祖である、ということも初めて知りました。
その福沢一郎の元に集った画家たちの前衛・シュルレアリスム作品が一堂に会す、というのが本展覧会だそうです。

やっぱシュルレアリスムはイイですよねぇ。
普通に存在する風景や人物が描かれた絵画の場合、その美しさやどのような技法によって描かれているのか、といったことに想いが至ります。
しかし、シュルレアリスム絵画の場合、どのような心理状態がこのような絵を描かせたのか、といったことに思いが至ります。
絵の前に立ったときに考えることが全然異なるんですよね。前者が外面的とすれば、後者は内面的と言いますか。そして自分としては後者の方が興味深いです。

今回展示されていた絵はいずれも興味深い作品がそろっていたんですが、やはりキービジュアルになっている福沢一郎「」には触れざるを得ませんね。
当初チラシしか観ていなかったんで、現物を観るまで気づかなかったんですが、ここに描かれた二頭の牛は体に穴が開いていてボロボロになってるんですよね。嫌な不安感を煽り立てる迫力のある絵です。
それ以外では、山下菊二「転化期」、眞島建三「パンの詩」、早瀬龍江「絶望の果て」といった作品がとりわけ印象に残りました。

特に山下菊二「転化期」は能面のべしみや文楽のガブを思わせる日本古来の造形と、腹や股間に浮き出た顔という西洋版画の悪魔の描画を思わせる造形などが混淆して、何とも不可思議な迫力を持った絵でした。

ところで、この板橋美術館、展示スペースが二つに分かれていて、その間にあるロビーでは、それぞれの展覧会に関連した映像が流されています。
今回は「怪獣のあけぼの」第11回「池袋モンパルナス(後編)」が上映されていました。
なんでも本展覧会のテーマである福沢一郎絵画研究所には、ウルトラマンシリーズの怪獣造形をしていた高山良策という人も所属していたとのこと。そして「怪獣のあけぼの」というのは、その高山良策という人のドキュメンタリーなんだそうです。

まぁウルトラマンやウルトラセブンの怪獣制作にはシュルレアリスム作家が関わっているというのは、怪獣の名前(ブルトン、ダダ、ダリー)やその形状(特にウルトラセブンの怪獣)を観れば即座に分かりますよね。
私は三鷹市美術ギャラリーで開催された「怪獣と美術-成田亨の造形芸術とその後の怪獣美術-展」を観ていて、成田亨という作家の名はシュルレアリストとして知っていたんですが、高山良策という名は今回この映像を観て初めて意識しました。
ウルトラマンなりウルトラセブンなりのDVDで、高山良策の名がクレジットされているのを見ていたはずですが、冒頭に述べたとおり、作品それ自体、ウルトラマンなりウルトラセブンで言えば、ストーリーや怪獣造形には意識が行っていますが、誰が監督したのか、誰がその怪獣を作ったのか、というのはあまり意識が行かないんですよね。

そんなわけで、ウルトラマンとシュルレアリスムの関連について改めて意識させてもらった、そんな展覧会でもあったのでした。



Comments

Tell me what you're thinking...
and oh, if you want a pic to show with your comment, go get a gravatar!





WP-SpamFree by Pole Position Marketing