『空想動物の世界展』

2012 / 11 / 05 by
Filed under: 展覧会日記 
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『空想動物の世界展』

『空想動物の世界展』


2012年11月3日(土)、池袋サンシャインシティにある古代オリエント博物館標記展覧会を観ました。会期は2012年9月15日(土)~11月11日(日)。

本展は、この古代オリエント博物館と滋賀県にある MIHO MUSEUM の共同主催とのこと。そう言や、MIHO MUSEUM でそんなタイトルの展覧会がやってたっけかなぁ。調べたら2012年7月7日(土)~8月19日(日)の会期で開催されてました。

MIHO MUSEUM と言えば、現在は『土偶・コスモス』(会期:2012年9月1日~12月9日)という展覧会を開催してることからも察せられるとおり古代遺物系美術館。
そして、古代オリエント博物館はその名のとおり、メソポタミア(バビロニアやシュメールなど)といった西アジア古代文明の遺物を中心に扱う博物館。
この強力なタッグによる展覧会ともなれば、古代史萌えとしてはかなり気になるところですが、さらに空想動物を核にした古代神話についての展覧会ときては、町の神話好きとしても外せないわけです。

  1. 西アジアの空想動物・神々
  2. 地中海世界の空想動物・神々
  3. 南アジア・東南アジアの空想動物・神々
  4. 東アジアの空想動物・神々

展示は上記の4つに章立てされていて、それぞれ、メソポタミア、ギリシア、ヒンドゥー、シナの神話世界についての展示です。

各コーナー冒頭にそれぞれの神話体系における宇宙観(ヒンドゥーなら亀の上に乗った象が世界を支えている、とかそういうやつ)が図解されており、違いが一目で分るようになっています。もうこの時点で期待が膨らむ、丁寧な造りの展覧会なんじゃあないでしょうか。
それぞれのエリアの神話に出てくる神々や魔物、怪物などが刻まれた遺物が超萌える。これでエジプト神話に関する展示もあれば、古代信仰を網羅する展覧会になっていたでしょう。実にステキ。

ところでギリシア、ヒンドゥー、シナの各神話は、各種書籍が刊行されていて、一般人でも知識が得られやすい環境にあると思いますが、メソポタミア周りの神話体系については、それほど資料は充実していない印象があります。手軽に読めるのは、「ギルガメシュ叙事詩(ちくま学芸文庫)」くらいでしょうか。
そんなあまり馴染みのないメソポタミアの展示物を興味深く拝見しました。世界史の教科書でしかお目にかかったことのない円筒印章とかレリーフ版の現物を堪能しましたよ。

さて、今回仕入れた新知識。

メソポタミアでは「ラマシュトゥ」という病気をもたらす女の悪霊が想像されていたらしい。特に流産や乳児の突然死はこの悪霊の仕業とされていたという。で、そのラマシュトゥへの対抗手段に驚いた。何とラマシュトゥ除けの護符には「パズズ」が刻まれているという!

パズズといえば、映画「エクソシスト」でリンダ・ブレア扮する少女に取り憑く悪魔として描かれた、バビロニア神話における地下世界の邪悪な悪霊じゃないですか。

図録を買って読んだらば、パズズは邪悪な存在であるが、疫病を蔓延させる風(特に西風)から守護する役目もあり、ラマシュトゥと敵対関係にあると見なされていたんだとか。

あと展示物にはなかったんですが、バビロニア神話に「サソリ人間」という怪物がいます。
ゲーム「女神転生」シリーズでは「パピルサグ」と名づけられていますが、それはどうやら間違いで、正しくは「ギルタブルル」というらしい。ではパピルサグとは何かというと、シュメール神話の神の一柱の名で、エンリル神(シュメール神話の最高神)の息子とのこと。

次はギリシア神話から。

天に煌めく星座のひとつに「くじら座」というのがありますね。これは人身御供にされたアンドロメダーを食らわんとしたところをペルセウスにメドゥーサの首を見せられて退治された怪物です。

映画「タイタンの戦い」ではこの怪物、オリジナル(1981)リメイク(2010)ともに「クラーケン」という名でした。
クラーケンってのは北欧の海に言い伝えられる巨大な怪物で、タコやイカのような頭足類であるとも、あるいはクジラであるとも言われる、伝説の動物とも UMA ともつかない存在です。

それはともかくギリシア神話に戻ると、このアンドロメダーを襲う怪物、今まで読んできたギリシア神話の本では、いずれも「化けものクジラ」と書かれてたんですよねー。本展では、その怪物が刻まれた皿や石などが展示されておりまして、そこで初めてこの怪物に「ケートス」という名がついていたことを知りました。

ヒンドゥーでは「キールティムクハ」や「ヴィヤーラム」というのを初めて知りました。

そして中国の鎮墓獣「辟邪」などなど、数多くの知らなかった空想動物を数多く見られて、充実の展覧会でした。



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