黒田記念館

2012 / 04 / 07 by
Filed under: 展覧会日記 
Bookmark this on Delicious
[`livedoor` not found]
[`yahoo` not found]

黒田記念館

黒田記念館

2012年4月7日(土)、上野の黒田記念館へ行ってきました。

日本近代洋画の父、黒田清輝。
その名は知らなくても、描いた絵(例えば「湖畔」)は誰もが見たことがあるであろうほどのビッグネーム。
その黒田清輝に関わる施設があるということは数年前から知っていたんですが、開館が水曜、土曜の13時~16時という極めて限られている点や、写生画にはあまり食指が動かされない等、なんやかんやで今まで行ったことがありませんでした。
しかし先日ウェブサイトを見たらば、今日を最後に、耐震化工事のためにしばらく休館するという。しかも再開日は未定とのこと。これは今見とかないと次はいつ見られるか分からん、ってわけで滑り込みで見てきた次第。

ところで黒田清輝というのは子爵だったそうな。そして亡くなるときに、遺産の一部を美術の奨励事業に役立てるよう遺言したそうです。
これこそがノブレス・オブリージュの精神。持てる者の務め。実にすばらしい。
それを受けて建てられたのが、この黒田記念館。いろいろな変遷があって今、この施設は東京国立博物館の所管とのことです。

国立メディア芸術総合センターを「アニメの殿堂」だの「国営の漫画喫茶」だのと的外れな難癖つけたり、スーパーコンピュータ予算を「2番じゃダメなんでしょうか」とトチ狂った観点から大幅削減したりと、日本の文化や科学を後退させる企図を持っているとしか思えない現政権下では、ヘタすると黒田記念館はこのまま閉鎖されてしまうかも知れん、という危惧を私は抱いています。

さて私の目当てはというと「智・感・情」です。
少し前に村上隆が精確に模写し、またオタク絵師たちに萌え絵文法で模写させた絵ですね。

「智・感・情」 左:「情」、中:「感」、右:「智」

「智・感・情」 左:「情」、中:「感」、右:「智」

尾形光琳を筆頭とする日本伝統の金地を背景に描かれた写実的な女性像。日本画と洋画が混淆したなんとも不思議な雰囲気を醸し出している油彩画です。描かれた女性がほぼ実物大という大きな作品が三連で並んでおり、実に迫力がありました。

ところでこの連作、そのポーズを設定するに当たって仏像が念頭にあったんですかねぇ。
なんか、三面六臂の仏像を解体して三人の女性として再構成したんではないのか、という印象が頭を離れない。
まぁ向かって左側の「情」の女性の表情を見ていると、仏像というよりも、デビルマンに出てくる魔王ゼノンの方が思い浮かんでくるのだけれど。

「智・感・情」の顔を並べたパネル

「智・感・情」の顔を並べたパネル

あと、個人的には「智」と「感」がタイトル逆なんじゃないかなぁ、という想いがぬぐいきれない。
中央の、仏像を思わす遠くを見据える冷徹な眼は「智」と呼ぶに、右の、どこにも合っていない俯き加減の視線は「感」と呼ぶに、むしろ相応しいように思える。左の、眉根にしわを寄せて髪を掴む仕草は「情」と呼ぶに相応しいとは思う。

ところでちょっと歩いた日暮里の方に朝倉彫塑館というのがあることを、やはり数年前に知りました。知ったそのとき既に休館中で、もうずいぶん長いこと閉じているんですが、来年の2013年に再開予定だとか。

朝倉彫塑館も、この黒田記念館も、再開したら行きたいと思います。



Comments

Tell me what you're thinking...
and oh, if you want a pic to show with your comment, go get a gravatar!





WP-SpamFree by Pole Position Marketing