『マテリアライジング展』

2013 / 06 / 29 by
Filed under: 展覧会日記 
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『マテリアライジング展』

『マテリアライジング展』

夏目漱石の美術世界展』を観たあとは、そのまま東京藝術大学大学美術館陳列館に移動し、標記展覧会を観賞。会期は2013年6月8日(土)~23日(日)でした。

「アルゴリズミック」や「ジェネラティブ」といったキーワードで代表されるシステマティックな表現についての展示ということで、観る前はワクワクしてたんですよね。でも公式サイトなどを観ていると、なんか思ってたんと違う臭がプンプン漂っていて不安でもありました。

で、実際観てみて、ガッカリ側に心が大きく振れました。もうちょっとコンピュータ・プログラミング的な展示があるのかなぁ、と思っていたんです。でもそうではなくてコンピュータや3Dプリンターなどを使って産出された物体の展示ばかりでした。

そんな中、心に強く残ったのは土岐謙次という人の「七宝紋胎乾漆透器」(出展作家紹介)。これは美しい。他の展示からは「美」は一切感じられませんでしたねぇ。後述の2件を除いて。

土岐謙次「七宝紋胎乾漆透器」(1)

土岐謙次「七宝紋胎乾漆透器」(1)

土岐謙次「七宝紋胎乾漆透器」(2)

土岐謙次「七宝紋胎乾漆透器」(2)

タイトルだけなら「線入力三次元ボロノイ図形による構造体のスタディ」などは、かなり食指が動かされるんですが、実物はというと、自重を支えきれずに展示中にどんどん歪んできてしまったという印象。故意なのかも知れませんが、失敗作然とした残念なオブジェ。てゆーかそもそもボロノイは全く感じられないなぁ。

日々の記録」は室内写真をピクセルレベルで変形して、擬似的な3次元にして、それをグルグル動かすことができるという趣向なわけですが、ヒネリが足りないという印象。
過去、ActionScript ワークでさんざんありましたよ、このレベルなら。wonderfl にもあると思うな。

Red Venation Fence ―小石川植物園のフェンス(2011-)」(出展作家紹介)は、パネルのフェンスに多数の穴を穿って、葉脈の模様を描くというもの。美は感じられましたが、惜しいなぁ、という感じ。
葉脈の模様は、自然の葉の成長原理をコンピューターでシミュレーションすることで生み出している、というです。
ということは拡散反応によるものだと思うんです。このあたりのコンピュータ・シミュレーションの時間軸による変化を、なんでPCで見せてくれないの? それがとても寂しい。
まぁそれよりも穿たれた穴が4種類の大きさの正方形ってのは如何なものか。
「アルゴリズミック」や「ジェネラティブ」というキーワードから想起されるのは、有機的、生物的、自然界といった概念だと思うんですよ。
人工の極致ともいえる正方形よりも、歪んだ円や歪んだ楕円、そして、それらのサイズも同じサイズは一つとしてなく、だいたい同じような大きさの4グループに分けられる程度のラフなものだった方が良かったんではないか、と強く感じた次第です。単純過ぎ?

もうひとつ、少なくとも美は感じられた作品が「knitting paper module <アミガミ>」(出展作家紹介)。
ただ、小さいモジュールをたくさん組み合わせて一つのものを作る、というコンセプトが、最初に挙げた「七宝紋胎乾漆透器」と被っているうえ、こちらは材質がペラッペラな紙のせいで、作品自体かなり見劣りします(はっきり言って貧乏くさい)。それが可哀想かなぁ。

ところで「七宝紋胎乾漆透器」や「アミガミ」と同じコンセプトの「ワミー」という知育玩具があるんですが、それらを見て、ワミーで遊んでみようかなぁ、という気になりました。

展覧会としての印象としては、全体的に、技術頼りで、ほとんど考えてないんじゃないかないかなぁ、という感じ。発想を発酵させずに脊髄反射的に提出しているというか。
インスピレーション主義でもかまわないとは思いますが、だったらせめて美しくあってほしいものです。藝大での展覧会なんだから。



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