『夏目漱石の美術世界展』
平成25年6月22日(土)、東京藝術大学大学美術館で標記展覧会を観ました。会期は 2013年5月14日(火)~7月7日(日)。
文学にあまり興味のない私は、夏目漱石というと「夢十夜」くらいしか、積極的に読んだことがありません。
ただ、美術展をいろいろ巡る間に、「草枕」の中でミレイの「オフィーリア」について触れているという知識は得ていました。
ところが夏目漱石は美術好きはかなりのもので、「オフィーリア」以外にも、かなり多くの数の絵画について自作中で触れ、さらに小説の主題や重要なポイント等としてもふんだんに使っているということを、この展覧会で知ることができました。
本展で私の目を惹いた展示作品はふたつ。
幻想好きとしては、ウォーターハウスの「人魚」に心惹かれます。
人魚の肢体、とりわけ銀色に煌めく鱗が実に美しい。
そして、本展で一番興味深く、かつ、強いインパクト与えてくれた作品は、やはりブリトン・リヴィエアーの「ガダラの豚の奇跡」。
何それ? 中島らも? って思っていたら、聖書に出てくる物語を描いたものだとか。ひとりの人間に取り憑いた悪霊をイエスが追い出したところ、豚の群れに憑依して、その豚の群れは断崖から飛び降りたという話だそうで。
聖書まともに読んだことのない私は、ふーんそんなエピソードがあるんだー、と思っていたんですが、その悪霊の名前が「レギオン」だと! それなら女神転生で聞いたことがある。悪魔絵師による造形がけっこう強烈でしたね。
そんな「ガダラの豚」という絵が、なんと「夢十夜」の第十夜に描かれている、地の果てから延々と押し寄せてくる豚の群れの元ネタだとは。てゆーか、あの奇想に元ネタがあったとは。なんとも驚いた次第。
「夢十夜」の他の夢にも何か絵画的な元ネタがあるんですかねぇ。
ミケランジェロは大理石に埋まっている人体像を掘り出しているだけ、という「夢十夜」第六夜の運慶と同じような話は聞いた記憶があったりなかったりするんですが。
なお「第一夜」に出てくる妻に、ラファエル前派のファム・ファタルの面影が見えるという指摘には、わたくし釈然といたしません。
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