『お伽草子』

2012 / 10 / 15 by
Filed under: 展覧会日記 
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『お伽草子』

『お伽草子』


2012年10月8日(月)に、サントリー美術館の標記展覧会を観ました。

年代物の絵巻物という性格上、その展示にはかなりの制限が課せられることでしょう。そのため、かつて日本には物語があふれていた、とカタログ的に数多くの物語を紹介するというコンセプトになったものと思われます。そしてそれは、限られた条件内でベストを尽くしたものだ、ということは理解しているつもりです。
しかしその結果として、それぞれの物語の紹介が細切れになり、各物語のストーリー全体がつかみにくかったように思えます。その点で個人的にはモヤモヤする展覧会でした。

たとえば「是害房絵巻」がどういう話か、見てる人、理解できたのかなぁ。
あれは、慢心して日本の仏僧に喧嘩を売ったけど逆にコテンパンにされた中国の天狗・是害房(または是害坊)に対して、日本の天狗の「しょーがないなー、だから言ったじゃないすか」的ながらもまめに介抱するさまが面白い物語だと思うんですが、そういう部分は取り上げられていませんでしたよね。

あと「長谷雄草紙」も最後の解決編が提示されてなかった。
物語の山場は、女が水になる部分だろうけど、なぜそうなったのかという最後の説明もけっこう重要だと思うんですよ。
それを知ることで、鬼の異能力に戦慄し、そこから「撰集抄」にある「西行の人造人間創造」の話とかに想いが馳せたりするわけです(と、後段は澁澤龍彦の受け売り)。

全体の話が分るように展示されているのは、複写と併せて全巻展示になっている「浦嶋明神縁起絵巻」くらいでしたかねぇ。「酒呑童子絵巻」も複数展示されていて、頼光一行が童子の館に到着してからのストーリーは追えるようになってましたが。神便鬼毒酒ゲットの場面もあったっけか。

それと同一の物語の絵巻をいろんな章に分割する展示は、ちょっと違和感がありました。
例えば「福富草子」は第1章と第3章に、「鼠草子」は第3章と第5章に展示されてます。章ごとにそれぞれ着眼点が異なることは分りますが、福富草子も鼠草子もそんなメジャーな物語じゃないと思うので、同じ物語は一か所に集めた方が、惑いにくいんじゃないでしょうか。

まぁ、個人的には最終章で展示されてた「付喪神絵巻」と「百鬼夜行絵巻」が目的だったんで、あとは附録なんですけどねー。真珠庵本が見られたから私は充分満足です。

本展の会期は2012年9月19日(水)~11月4日(日)ですが、期間が7分割されて展示替えや巻替えがかなり頻繁におこなわれます。

ところで「福富草子」って「瘤取」や「花咲爺」と同じ構造だそうですが、その最後は大きく異なる。悪い爺の妻である婆が逆ギレして良い爺に乱暴するらしいけど、どういう絵が描かれていたのか、すっげー気になるなあ。見たかったなあ。それとも絵は描かれずに絵詞だけで処理されてるのかなあ。知りたいなあ。それだけが心残り。



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