『ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅』
2013年3月20日(水)、埼玉県立近代美術館で標記展覧会を観ました。
会期は2013年1月22日(火)~3月24日(日)。特別出品予定の「バルコニー」を待っていたら、滑り込みの鑑賞になってしまったという。しかも諸般の都合で結局は出品されず、図録に収録されている図版で我慢することとなった次第。
石造神殿、電車、線路、クレーン、裸婦、三日月、薄明などなど。デルヴォーが描く絵の数々は、まるで一連の夢の光景を観ているようで、実にステキ。
シュルレアリスムの分野でゆるぎない個性を確立した綺羅星であるデルヴォーも、そのスタイルを確立するまでには長い紆余曲折があったという。初期から晩年まで時系列に並べられた作品により、そんな画家の自分探しの経過をうかがい知る、なかなか興味深い展覧会です。
初期の写実時代。
いろいろな画家のスタイルを真似する模索時代。
自分のスタイルを確立した時代。
そして最晩年。
最も興味を惹かれるのはもちろん自分のスタイルを確立した時代の絵なんですが、それを言うのは本展の企図的にアレなんで、まずは模索時代から。
後にデルヴォー自身により50点ほどの作品が破棄されてしまい、この頃の絵はほとんど残っていないという。しかし、もろにモディリアーニなヤツ(画像はこちらで見られます)とかを観ていると、隣でデルヴォーの霊が「やめてくれよう。恥ずかしいよう」と、「まんが極道」の記念すべき第一話の主人公、満丸くんのように、のたうち回ってるんじゃないか、そんな思いにとらわれますね。
足掻きというか蹉跌というか、まぁ本人にとっては黒歴史なんだろうなぁ、という感じ。
そして最晩年の作品群。
「カリュプソー」というタイトルの油彩画1点と、ともに無題の水彩画2点の計3点。
デルヴォーは晩年ほとんど目が見えなくなってたそうで、その頃に描かれたのがこれら3点とのこと。
「カリュプソー」の画肌なんか、けっこう悲惨な状態になっていて涙なしには観れないが、絵自体はなかなか抒情的でイイっすよ。静謐で硬質な、いかにもデルヴォーらしい絵とはまったく違う、温かみに溢れる淡い絵で、これはこれでかなり良い(「カリュプソー」の画像はこちらで見られます)。
なんかルドンの色彩作品と同じ匂いがしますね。個人的には、あまりルドンの色彩作品は好きじゃないんだけど。
これらの絵が完成して間もなく、最愛の妻が亡くなったという。それを機に筆を折ったというエピソードも泣ける。
ほとんど失われた視力という、自分自身の限界もあったとは思いますが、それよりも妻の喪失の方が創作意欲へのダメージが大きかったんじゃなかろうか。そうと思うと、創作の源泉としてのファム・ファタールの重要さというものがヒシヒシと伝わってきますよね。
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