『作家の視展 2010』

2010 / 09 / 11 by
Filed under: 展覧会日記 
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『作家の視展 2010』

『作家の視展 2010』

今日、平成22年9月11日(土)は上野の森美術館標記展覧会を見てきました。会期は平成22年9月8日(水)~14日(火)。

これはどのような展覧会かというと、公式ページには以下のように書いてあります。

毎年、上野の森美術館で開催している「上野の森美術館大賞展」において、第27回展までに受賞した作家に出展を呼びかけ、有志42名の作品を紹介するものです。

「上野の森美術館大賞展」とは何かというと、上野の森美術館のサイト内に専用コーナーがあり、そこの主旨には以下のように書いてあります。

上野の森美術館では、次代の日本の美術界を担う、個性豊かな可能性のある作家を顕彰助成する「上野の森美術館絵画大賞」を昭和58年に制定しました。

まぁ要は新進奨励のための賞ってわけですね。で、その「上野の森美術館大賞展」は今年28回目だったとのことで、つまり、『作家の視展 2010』は前回までの「上野の森美術館大賞展」受賞者による展覧会なんでした。

新進らしく若々しい素敵な作品もあれば、新進らしく未熟で心に響かない作品もあり、玉石混淆といった感じですが、その中で印象に残った2点をご紹介します。

「2010-環流」 丸山敏子

これは水面に映った光なんでしょうか。それとも水底に届いた光なんでしょうか。
深い青、淡い青緑、そして白い縞と渦。
これらの色で構成された画面を見ていると、心が安らぐとともに、何か心がざわめく。相反する感情が沸き起こる不思議な絵です。

「暮れゆく街」 佐藤武

掛け軸のように縦長のキャンバス。
その画面の下部1/5くらいは中近東の砂漠の町を思わせる石造りの家並みが描かれている。人はおらず静寂につつまれている。
そして、その町の上空には長く大きな石造の四角錐が浮かんでいる。
先端を下に向けたそのオベリスク様の人工物は画面の2/3を占めるくらいの巨大さを持ち、今にも町に墜落しようと身構えているかのよう。
そんな景色がセピア色のモノクロームで描かれている。

この絵を見て思い起こされるのはマグリットの「ピレネーの城」。もちろん「暮れゆく街」は「ピレネーの城」を踏まえているんでしょう。

「ピレネーの城」は荒波の海上に、上部が城の形状をした巨大な岩が浮かんでいるという絵です。その荒波にも関わらず、まったく音が聞こえてこない不思議な、落ち着いた静寂さを湛えた絵です。

一方この「暮れゆく街」は音を発する要素が皆無なのにも関わらず、静寂さなどは微塵もない。この巨石が、いつ墜落して、町を破壊し、数多くの人々の命を奪うのか。それは今すぐに起きるのではないか。そんな緊張感に張りつめた恐怖を感じさせる、実に心を掻き乱す絵です。

ところで、この絵は多分に政治的意図を描いているようにも見えるけれど、もし私が感じたとおりのメッセージを込められているなら、ちょっと興醒めだなぁ、とも感じました。

ネットでちょっと調べたら、この人同じモチーフを繰り返し描いている人のようだ。「暮れゆく街」とほとんど同じ「不安な時代」って絵を見つけた。違いは空に浮かんでいる石柱の形状のみ。



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