『イメージの力 ―国立民族学博物館コレクションにさぐる』
2014年3月8日(土)、国立新美術館で標記展覧会を観ました。
「みんぱく」の愛称で知られる国立民族学博物館の収蔵品であるところの民族学的あるいは民俗学的資料の数々を、大阪に行かずとも六本木で観ることができるという。しかもその展示物が妖怪クラスタ的には見逃せないものであるらしいという。
そんなわけで、私としては割と会期早い時期に行ってきた次第。
地域の文化や歴史を解説するという目的から、ふつう博物館の展示は地域毎や時代順になっていますよね。
しかし、この展覧会では、各章で設定されたテーマ(共通する造形性や機能・効果など)に基づき、その展示物が、民族学的資料ではなく美術作品として扱われているので、地域や時代といった属性は意図的に無視されています。
たとえば、仮面のコーナーでは、北米、南米、メラネシア、アフリカ、東南アジア、北アジア、そして日本の仮面が所狭しと並んでいる。
視えないものの像のコーナーでは、ジャワのワヤンがあるかと思えば、アフリカやポリネシアの神像や祖先像の充実っぷりが凄い。日本からはオシラサマとタノカンサァが登場。
高みとつながるコーナーでは、トーテムポールやチャンスンといった塔形状のものが集められ、本展で最も目を惹くインドネシアの葬送用の柱ビスに魂消る。
最終章に至っては、魚網や梯子、籠に綱、石臼から投擲用ナイフの形をした貨幣などの日用品が、インスタレーションの手法で展示されているという状態。
その様子が実に新鮮です。
地域や時代という束縛から脱したことで、出逢うことのなかったはずの時空を超えた呪物同士が大きく共鳴し、この世に存在してはいけないカオティックな力場を発生させ、その中に足を踏み込んでしまったかのような、何とも奇妙な感覚を覚えました。
各地域・民族・時代ごとに異なる種々雑多な造形イメージの奔流。
それに身を任せるのが、この場における正しい態度なのかも知れません。
最も興味深かったのは、博物館展示物的な観方になってしまいますが、文化衝突によって生み出された新しいアーティファクトでしょうか。
先進文化に邂逅した途上文明が生み出すモノの数々です。
飛行機、高級車、ビール瓶などの西洋文物の形を模したガーナの棺桶群には度肝を抜かれました。
諸星大二郎のマッドメン・シリーズ(秋田書店刊「オンゴロの仮面」「大いなる復活」)で描かれていたカーゴ・カルトの飛行機模型(「カーゴの時代」「天国の鳥」)を初めて見たときの衝撃がまざまざと甦りましたよ。
会期は2014年2月19日(水)~6月9日(月)。
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