『鴨居玲展』

2010 / 07 / 25 by
Filed under: 展覧会日記 
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『鴨居玲展』

『鴨居玲展』

平成22年7月25日(日)、横浜のそごう美術館で標記展覧会を見てきました。

筆致や色遣いはどれもこれも全く同じ。モチーフやタイトルは何度も何度も同じ物を繰り返す、いやモチーフどころか構図に至るまで同じことを繰り返す。セルフカバーとでも言いますか。

一枚見ればあとは見なくてもいいかも、とすら思わせるこの引き出しの少なさは一体何なのか。
音楽で言えば川井憲二や渡辺宙明という人々がいるけど、画家でここまで徹底してワンパターンな人は初めて見た。

才能がない人ではない。いやむしろとても優れた技量の持ち主であることは、各作品、とくにクロッキーを見るとよく分かる。
でも何でいろいろな技法や題材にチャレンジしないんだろう、普通、芸術家ってどんどん変わっていくもんだけど、ここまでの頑なさは驚異に値する。でもこの陰鬱な作風は嫌いではないので、見ていて退屈はしませんでしたけどね。

会場内の解説を見るに、どうも油彩画というメディアがこの画家に向いていなかったようだ、ということが分かった。
創作意欲を一気呵成に媒体に叩きつけるタイプの作家で、ひとつの色を置いてそれが乾くのを何日も待って、という油彩の手法は馴染まない人だったらしい。

でも、それは二つの車輪の一方じゃないのかなぁ、という印象を受けました。

この人とてつもない完璧主義者だったんじゃないでしょうか。
高い技量を持った完璧主義者は、自分が描けるはずの理想が高くなりすぎて、自分が描いた現実を許すことができない、と感じてしまうのはよくあること。
この鴨居玲の描く絵は人気を博し、高く評価され、書くそばから売れたらしい。
高い技量ゆえ、世間の絶賛を受けるんだけど、それが逆効果になって、作家を追いつめ、自縄自縛に陥って作品が描けなくなる、という事例はいろいろありますよね某漫画家とか。

この手の人にとっては世間の評価が慰めにはならない。自分の内なる声に押し潰されてしまった悲劇の天才画家。そんな印象を受けました。

会期は平成22年7月17日(土)~8月31日(火)。会期中は無休というのがありがたいですね。



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