『ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア』

2013 / 03 / 16 by
Filed under: 展覧会日記 
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『ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア』

『ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア』

Bunkamura ザ・ミュージアムで2013年3月9日(土)~4月21日(日)の会期で行われている標記展覧会を初日に観ました。意外と混んでおらず、スムースに鑑賞できました。

「パトラッシュ、ボクはとっても眠いんだ」

現代日本における働き盛り世代周辺の人々にとって、ルーベンスというとやはり「フランダースの犬」じゃあないでしょうか。

借家を追い出されたネロとパトラッシュは、寒さをしのぐため入り込んだアントワープ大聖堂で、たまたま緞帳が上がっていたため、常日頃は観覧料を払えず見ることが叶わなかったルーベンスの「キリスト昇架」と「キリスト降架」を見ることができ、そのまま天に召されました。

一方、我々はというと、本展覧会でネロが見た絵を観ることは叶いません。まぁ教会祭壇画ですからねー。日本で開催される展覧会で見られるわけないわな。とは言っても「キリスト降架」については版画バージョンの作品が展示されており、ネロの死の間際の心に思いを馳せることができます。

それはさておき、個人的に注目したのは、展示作品にギリシア神話を画題とした作品が充実していたこと。

町の妖怪ファンとしてはやはり「グラウコスとスキュラ」は足を止めざるを得ない。
あまりメジャーでないと思われるこのキャラクターたちをセレクトした理由は奈辺にあったのか気になるところ。この2人の物語が、ルーベンスが活躍した当時の人々に、響くものがあったんでしょうか。それとも実はけっこうメジャーな画題だとか?

グラウコスというのは男の海神(元人間)で、スキュラというのはニンフです。グラウコスはスキュラに惚れて一方的に猛攻。そんなストーカー行為に迷惑していたスキュラに、さらなる悲劇が襲います。グラウコスに惚れたキルケと言う魔女が、スキュラに嫉妬して魔法をかけたのです、そのためスキュラは上半身は美しい女性のままなのに、下半身は6匹の犬という醜い姿に変わり果ててしまったのでした。

なんたる理不尽。なんたる不条理。

スキュラはグラウコスから逃げているのに、なんでキルケはスキュラを攻撃対象に選ぶかね? とかなり釈然としない展開。まぁギリシア神話ってそんな理不尽な話ばっかですけどね。

怪物化したスキュラは以後、シシリア沿岸の海峡(メッシーナ海峡)の片側に棲み、船を襲う魔物になったという。
なお、スキュラの真正面、海峡の反対側にはカリュブディスというやはり船を襲う魔物が棲んでおり、航海の際は真ん中に当たる航路をとって、ぎりぎりで2匹を避けなければならない、そうしないと、いずれかの魔物によって難破させられる、ということが「オデュッセイア」に出てきます。

カリュブディスは渦潮を擬人化したものなので、スキュラも何らかの海難原因を擬人化したものなんでしょうね。
スキュラにしてもカリュブディスにしても、ジョジョ第5部に出てくるスタンド「ノトーリアスB・I・G」のティレニアの胃袋みたいなもんですか。

展示されていた「グラウコスとスキュラ」では、その説明書きにあるように、キルケがけしかけた犬にスキュラが襲われている場面として描かれており、若干、ギリシア神話とは異なる描写となっていました。

Peter Paul Rubens  Scylla et Glaucus

Peter Paul Rubens Scylla et Glaucus

もうひとつギリシア神話ネタで気になったのは「アポロとピュトン」。
ピュトンというのはヘビの怪物なんだけど、聖人のドラゴン退治よろしく、西洋のドラゴンの意匠になってました。

Jan Boeckhorst  Apollo en de Python

Jan Boeckhorst Apollo en de Python



Comments

One Comment on 『ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア』

  1. dezire on 日, 14th 4月 2013 11:35 PM
  2. こんにちは。
    私もルーベンス(栄光ギリシア神話のアントワープ工房と原典のイタリア)展に行ってきました。
    興味深い視点でギリシア神話について書かれておられ、大変興味深く読ませていただきました。

    私は今回展示されていた代表的作品を通して、ルーベンス美術の魅力を私なりにまとめてみました。
    よろしかったら、ぜひ一読してみてください。ご感想、ご意見などどんなことでも結構ですから、ブログにコメントなどをいただけるとうれしいです。

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