『「雪」曽根裕展』

2011 / 01 / 09 by
Filed under: 展覧会日記 
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水晶。
六角柱を成す無色透明の鉱石。
その深い透明度と、それゆえの眩い煌めきは、まさに自然の神秘。
この世で最も美しいもののひとつだと私は思います。

雪。
その目に見えぬ真の姿は六角形の結晶。
放射状に枝を伸ばす形状のバリエーションの無限さも、また自然の神秘。
これも、この世で最も美しいもののひとつだと私は思います。

水晶を素材に、雪の結晶の形を彫り出した立体造形作品の展覧会が、銀座メゾンエルメスで、2010年12月10日(金)~2011年2月28日(月)の会期でおこなわれているという。2011年1月8日(土)はそんな標記展覧会を見に行ってきました。

この展覧会を見て感じたこと表現すると「絶望」の一言。これにに尽きます。

鋭い縁が打ち砕かれ、その身を鑢で削り取られ、曲面になってしまった水晶は、ここまで薄汚い物体に落ちぶれてしまうのか。

例えるならば、学生時代、光り輝いていた憧れの女性がいたとして、その彼女に数十年ぶりに再会して見れば、その顔や体の線には結婚生活に疲れがクッキリを浮かび上がり、かつての眩しさは見る影もなくやつれている、そんなくたびれた中年女に成り下がってしまった姿を見たかのような悲しさ、虚しさ、やるせなさ。

水晶という、自然が長い長いときを費やして培ってきた美に、人間の賢しらな手を加えることの罪、自然への冒涜、人の不遜が眼前に展開しているこの展覧会。とても勉強になりました。

近々、東京オペラシティアートギャラリーで開催される同じ作家による展覧会、素材は大理石のようですが、観に行くと、やはり同じ悲しみを感じてしまうことになるんでしょうか。
今回1点だけ大理石彫刻が展示されていたんですが、水晶までは行かないにしろ、やはり見ていて多少つらいものがあったんですよね。



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