『種村季弘の眼 迷宮の美術家たち』
2014年9月12日(金)、板橋区立美術館で標記展覧会を観ました。
本展覧会は、澁澤龍彦と並んで、錬金術、魔術、吸血鬼、エロティシズム、アナクロニズム、ペテン師等、西洋文明の異端や暗黒面を日本に紹介した文学者・種村季弘の、直筆原稿や著書といった著述活動にかかわるアイテムや、彼が愛した美術作品を堪能できるものです。
澁澤龍彦と種村季弘。いずれも河出文庫にその著作が多く収録されています(ただし種村著作は多くが品切・重版未定)。
しかし、私、澁澤龍彦は文庫オリジナル編集もの以外はたいてい読みましたが、種村季弘は全然読んだことなくって、本展でその謦咳に触れる機会をいただいた次第。
マックス・エルンスト、ハンス・ベルメール、マックス・クリンガー、エルンスト・フックス、エーリヒ・ブラウアー、ホルスト・ヤンセン、ハインリヒ・フォーゲラー等々。
お馴染みな作家も初見の作家も、いずれも目を惹かれてならない、ステキな海外勢。
今回、私にとって一番の収穫は、ゾンネンシュターンを、しかも2点も観ることができたこと。しかし、寄託ではありますが、ゾンネンシュターンを所蔵している美術館が、日本に2館もあるとは思っていませんでした。すごいぞ足利市美術館(浅川コレクション)! すごいぞ愛知県美術館(木村定三コレクション)!
日本勢も負けてはおりませんぞ。
井上洋介、トーナス・カボチャラダムス、横尾龍彦、美濃瓢吾といった、今まで存じ上げなかった皆さまの、これまた強烈なインパクトの作品群に圧倒されました。暗鬱でありながらユーモラスでもあり、味わい深いものばかりです。
妖怪クラスタの皆さまにおかれましては、一度見てもよろしいのではないか、と思われる作品として、最後に挙げた美濃瓢吾という画家をご紹介します。妖怪を扱ったもの4点で《猫又》、《豆腐小僧》、《ひょうすべ》、《琴古主・三味長老》というもので、基本、鳥山石燕の図像を引用したもので、あまり新味は感じられませんが、アクリル・ガッシュというねっとりした質感の画材で描かれており、キッチュ感満載で何か見入ってしまう。ちなみに豆腐小僧はリトル・グレイ。
「あいうえおばけのおまつりだ」という絵本の挿絵として描かれたものらしい。
ソレ系が趣味の人にとっては、感涙の途切る暇がない、実にたまらない展覧会です。板橋区立美術館はホントいいとこ攻めてきますよねー。
ところで、本展の図録は美術館が編集発行したものではなく、平凡社による一般書籍の体裁をとったもの。展覧会図録というと個人的には青幻舎のイメージが強いんですが、平凡社ってのは珍しいんじゃないでしょうか。もちろん購入いたしました。
会期は2014年9月6日(土)~10月19日(日)です。
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