『尊厳の芸術展』

2012 / 11 / 16 by
Filed under: 展覧会日記 
Bookmark this on Delicious
[`livedoor` not found]
[`yahoo` not found]

『尊厳の芸術展』

『尊厳の芸術展』

2012年11月14日(水)、東京藝術大学大学美術館で標記展覧会を観てきました。

太平洋戦争中のアメリカにおいて、強制収容所に収監された日本移民および日系人の人々が、その不自由な生活を豊かにしようと作り上げた調度品や日用品、装飾品の数々を見ることができる展覧会です。
素材や道具が乏しい中で、これほどの完成度と美しさを誇る工芸品を作り出した人々に心が強く揺さぶられます。

実用品ももちろんすばらしいんですが、枯れ木を動物に見たてた置物や、地面を深く掘ることで得られる小さい二枚貝や巻貝の殻を組み合わせて作った花のブローチなどの装飾品にも、また心打たれます。

極限状況でも文化を忘れない、いや極限状況だからこそなんでしょうか、文化を愛する人間の魂の気高さには、頭を垂れざるを得ません。

個人的には、ギイチ・キムラという人が木を組み合わせて作った三段引出の表面の柄の美しさと、ホウメイ・イソヤマという人が石を削り出して作った硯や急須、茶碗の滑らかな部分とザラザラした部分の対比の美しさに目を惹かれました
主催者であるNHKの公式ページでそれらの作品を見ることができます。前者は「第1章 ―生活に必要なもの」、後者は「第4章 ―故国の文化」の部分にあります。
旅ぶくろというサイトのこちらのページでも三段引出、硯、急須の写真が見られます。クリックで拡大します。

本当に人の心に響く創作物とは何なのかを痛感させてくれるこの展覧会、芸術愛好を自称する者、いや人間ならば必見の展覧会ではないでしょうか。日本人である我々は特に。

そして、この展覧会が日本の芸術における最高学府である東京藝術大学が擁する美術館で開催される、ということも非常に意義深いことだと思います。
この展覧会を見て、心を動かされた学生の皆さんが、本当に人の心を動かすとはどういうことなのか、を真剣に考えて創作をする芸術家に成長することを切に祈ります。

それこそが、脊髄反射レベルの思いつき、奇を衒っただけで中身がない、そんなコンテンポラリーアートなる愚物を縮小再生産し続ける袋小路に嵌り込んだ芸術界を救うものであると私は信じます。

会期は2012年11月3日(土)~12月9日(日)。観覧料は無料。



Comments

Tell me what you're thinking...
and oh, if you want a pic to show with your comment, go get a gravatar!





WP-SpamFree by Pole Position Marketing