『はじまりは国芳』

2013 / 01 / 16 by
Filed under: 展覧会日記 
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『はじまりは国芳』

『はじまりは国芳』

2011年は歌川国芳の没後120年、2012年は月岡芳年の没後120年ということで、歌川国芳や月岡芳年の回顧展が何件か開催されました。そんな被りネタっぽくありながらも、他の先行展覧会とは一味違うのが、横浜美術館で開催された標記展覧会です。

会期は、2012年11月3日(土)~2012年12月5日(水)が前期、2012年12月7日(金)~2013年1月14日(月)が後期の2期制。
前期を2012年11月23日(金)、後期を2013年1月12日(土)に観てきました。

入り口正面から見えるのは「相馬の古内裏」ではありませんか! その隣には「源頼光館土蜘蛛妖怪図」がある! 町のお化け好きとしてはもうテンション上がる上がる! うひょー!

「相馬の古内裏」歌川国芳

「相馬の古内裏」歌川国芳


「源頼光館土蜘蛛妖怪図」歌川国芳

「源頼光館土蜘蛛妖怪図」歌川国芳

なお後期は「宮本武蔵の鯨退治」「鬼若丸の鯉退治」と国芳の三枚続の大判画に展示替え。これまたド迫力のお出迎えに掴みがオッケー過ぎる。

「宮本武蔵の鯨退治」歌川国芳

「宮本武蔵の鯨退治」歌川国芳


「鬼若丸の鯉退治」歌川国芳

「鬼若丸の鯉退治」歌川国芳


この展覧会のコンセプトはというと、歌川国芳を起点として、そのDNAが一門や系列にどのように受け継がれ、展開されていったのか、ということを江戸末期から昭和初期という長い時間を縦軸に、そして日本画、油彩画、水彩画、版画、刊本という各種ジャンルを横軸にして概観しようという、いわば国芳進化論といった趣の意欲的な試みと申せましょう。

ただ、ちょっと時間的にも空間的にも風呂敷を広げ過ぎだったんじゃなかろうか。あまりにも広大な領域のどこにも焦点が当たってないというか。
そんなわけで、カタログを眺めるような感じで、キュレーターの意図を無視した楽しみ方を勝手にしてきましたよ。
浮世絵というとやはり美人画という潮流は欠かせない。そして鏑木清方や伊東深水といった、女性を描いた日本画も数多く展示されている今ならできる。「これはエロいで賞」ベスト3を勝手に選出!

第3位は後期より池田輝方「お七」。
これは八百屋お七だそうですが、情念や一途な思いといった荒々しさは感じられず、今にも大粒の涙をぽろぽろこぼしそうな眼から、儚さや脆さ、か弱さといった静かな哀切感がヒシヒシと伝わってきます。エロいというよりソソる絵です。
この絵のほぼ対面に、同じくお七をテーマにした月岡芳年「松竹梅湯嶋掛額」が展示されており、見比べることができたのも一興でした。

「お七」池田輝方

「お七」池田輝方

「松竹梅湯嶋掛額」月岡芳年

「松竹梅湯嶋掛額」月岡芳年

第2位は前期より鏑木清方「遊女」。
うっすらと開いた唇の艶めかしさ、どこに視点が合っているのか分からない流し目の色っぽさ。
これはクラクラきちゃいますねー。

「遊女」鏑木清方

「遊女」鏑木清方

「いたさう(世俗三十二相)」月岡芳年

「いたさう(世俗三十二相)」月岡芳年

そして堂々の第1位は後期より月岡芳年「いたさう(世俗三十二相)」。
苦悶に歪む女郎の表情、眉根といい、手ぬぐいを噛みしめる口元といい、ヤバすぎでしょう。
美術館や書籍などで何度も何度も見てますが、何度見ても心騒ぐ絵です。

ところで悪ノリが痛々しい「一夜漬け日本美術史」という本に、鏑木清方の中で最もエロい絵として「妖魚」という屏風絵がリストアップされていました。でもその絵ってどう見てもエロくないんですよねぇ。

本展後期ではその「妖魚」も出展されると聞き、ジックリ見てきた次第です。
正統派美人画絵師がゲテモノを描いたんで(悪い意味で)話題になったというような来歴があるのかなぁ、という印象を受けました(調べてないんで、実際のところはどうなのか知らん)。

「妖魚」鏑木清方

「妖魚」鏑木清方

この人魚は、アンデルセン物語に出てくるような可愛らしい存在ではなく、ヘタすると人をも食らう魔性のモノという印象で、けっこう好きな部類の絵です。
が、少なくともエロくはないでしょう。先に述べた「遊女」方が何倍もエロいです。

まさかと思うけど。オッパイほり出してるからエロいとか言ってる中坊神経(by 篠房六郎)の持ち主ではあるまいなあの本の監修者は。



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