『ウルトラマン・アート!』
今年の夏は特撮が熱い!
そんなわけで2012年8月24日(金)は、2012年夏の特撮祭り第1弾として、埼玉県立近代美術館で2012年7月7日(土)~9月2日(日)の会期でおこわなれている標記展覧会を観てきました。
今夏はどういう縁なのか首都圏の3つの美術館で特撮関連の展覧会がまとまって開催されています。
他の2つは、東京都現代美術館で開催されている『特撮博物館』(会期:2012年7月10日~10月8日)と、弥生美術館で開催されている『奇っ怪紳士!怪獣博士! 大伴昌司の大図解 展』(会期:2012年7月6日~9月30日)。
前者が日本特撮通史的な展示、後者は氏の少年雑誌における活躍関連の展示らしいです。
そして本展は、円谷プロによる特撮TVドラマ「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の2作品に絞ったもので、怪獣・宇宙人のデザイン画や、実際に撮影に使われた着ぐるみや小道具などが展示されていました。
両作品においてデザインを担当した成田亨、造形を担当した高山良策。
いやぁすばらしいですね。
以前、三鷹市美術ギャラリーで開催された『怪獣と美術』(会期:2007年9月8日~10月21日)では成田亨の怪獣デザインをメインとしたシュルレアリストとしての業績を見ました。
板橋区立美術館で開催された『福沢一郎絵画研究所 展』(会期:2010年11月20日~2011年1月10日)では絵画研究所所属作家として高山良策のシュルレアリスム絵画を見ました。
ご両者ともシュルレアリスムの美術家ですね。ウルトラマンでは怪獣や宇宙人の名前に「ブルトン」だの「ダダ」だのそのものズバリの命名をおこなってますしね。今回、あらためてそんなお二人の業績に触れた次第。
おっと忘れちゃいけないもうひとり。セブンから怪獣デザインに携わった池谷仙克。この方のデザインもすばらしい。ダリーやダンカン、ペロリンガ星人などのデザイン画が展示されていました。
いろいろ思うところがあったんですが、絞りに絞って2つばかり徒然なるままに。
感じたことその1。
先に触れた板橋区立美術館『福沢一郎絵画研究所 展』のとき、ロビーで「怪獣のあけぼの」の第11話「池袋モンパルナス(後編)」が流れていました。
その中でシーボーズは福沢一郎の「牛」という作品からインスピレーションを受けたのだろうというような話がありました。
えー、それ違うだろー、シーボーズよりもむしろエレキングのデザインだろう「牛」からのインスピレーションなら、と、思い切り突っ込みましたよ心の中で。
今回、そのエレキングのデザイン画をじっくり見てきました。そして確信しました。福沢一郎の「牛」を発想源とするならやはりエレキングだろうと。
「牛」はホルスタインの黒い斑点部分が虚ろになっているという絵ですね。その様子がエレキングの体、特に尻尾の黒い斑点部分にしっかり引き継がれていました。
エレキングは、黒い芯の上に、ある程度の厚みがある白い層が乗っており、ところどころ白い層が剥がれて黒い芯が見えているという描かれ方をしています(特に尻尾の部分)。例えるなら、鉛筆の木のあちこちをえぐって芯を露出させているといった感じ。
恐竜の骨格というデザインのシーボーズなら、むしろこっちの方が「牛」ですよね。
なお、そのエレキングのデザイン画ですが、今、気づいたんですが、上述した『怪獣と美術』でも展示されていたんですね。リンク先に画像がありますので、見比べてみてください。ちなみにシーボーズのデザインはコレ。
感じたことその2。
ポール星人の複製造形が展示されていました。
テレビ番組中では、炎の中に生息しているような感じで、ユラユラしたエフェクトがかかっており、その形状の詳細が分りづらかったんですよね(こことかこことかここ)。
今回現物を見て、なんてアートなデザインなんだと改めて感じ入った次第。特に目と口の間がせばまっていている部分が何かシュールでイイと感じました(ここ)。
あとアンノンのフィギュアも展示されていました。
テレビ番組中では、分離してしまった胴体と説明された、庭石みたいなものです。
この造形も何かよく分らない小難しい名がついた彫刻作品として、美術館に恒久展示されていても何の違和感もありません。イカす!(こことかここ)
あと着ぐるみ造形のこだわりと完成度の高さにも瞠目するものがあるんですが、離すと長くなるんで、実際に現物見てください。展示されているゴモラの頭部の角と嘴がまるで大理石にようになっていて驚愕しました。
ウルトラマン、ウルトラセブンの怪獣、宇宙人のデザインいずれ劣らず、それ自体が芸術といってよいものばかりですが、とりわけセブンの宇宙人、その中でも操演系のものは、コンテンポラリーアートの美術館に飾られてても何の違和感もないよなぁ、ということを改めて強く感じました。
多感な幼少期、そういうアート溢れるデザインに毎週触れることができた世代は、芸術教育という面からは実に恵まれていたなぁ、とデザイナーはじめ演者、スタッフの皆さま、番組作りに携わっていた方々には、感謝の気持ちのいっぱいです。
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