『非日常からの呼び声 平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品』
2014年4月29日(火)、国立西洋美術館で標記展覧会を観ました。
本展は、地下2階の展示室が会場です。
国西美の企画展というと、ひとつの展覧会で、地下1階および2階を使っていることが多かったと思うんですが、今回、1階では『ジャック・カロ ―リアリズムと奇想の劇場』という別の企画展が開催されており、2014年4月8日(火)~6月15日(日)という同一会期でふたつの独立した企画展が開催されています。
本展は、芥川賞作家平野啓一郎がその審美眼で国西美の所蔵品から作品をセレクトする、という企画らしいですが、なぜか1点だけポーラ美術館の所蔵品が含まれています。他に国西美の所蔵品31点。併せて32点の作品が展示されています。
油彩画や水彩画といった絵画作品、銅版画や木版画といった版画作品、そしてロダンの銅像などから成っていますが、全体的に幻想味過多で、とても好ましい展覧会でした。もちろん図録は速攻で買いましたとも。
特に《聖アントニウスの誘惑》はダフィット・テニールス(子)の油彩画とルカス・クラーナハ(父)の木版画が隣り合わせに展示されていて萌える。
なお《聖アントニウスの誘惑》は、ジャック・カロ展でも銅版画が展示されていますし、常設展第11室でもアンリ・ファンタン=ラトゥールの油彩画が展示されており、都合、4点の《聖アントニウスの誘惑》を観ることができるという実に贅沢な空間。とても幸せな気分になれました。
でも、ルドンの《聖アントワーヌの誘惑》が展示されていたらコンプリートだったのになぁ、と考えると、ちょっと画竜点睛を欠く感がしないでもない。
と思ったけれど、ルドンの版画集は、聖アントニウスの誘惑のエピソードをそのままビジュアル化したものじゃないっぽいから、画竜点睛は別に欠いていないか。
それはともかく、こういう切り口の展覧会、趣味が合致すればかなりハマれるっすよね。「誰々が選ぶ西洋美術名品」でシリーズ化イイんじゃないでしょうか。
ただし平野啓一郎さんは、なまじ美術史に造詣が深いせいで、美術史的に誰それが必要とか、誰それの絵だったら何々、的なセレクションに陥りそうになった旨、図録に書いてあったけど、陥りそうになったんじゃなくて、実際に陥ったんじゃないすかねポーラ美術館の所蔵品が入ってるってことは。
ってなわけで第2弾第3弾と続くなら、純粋に国西美の所蔵品だけからチョイスして、それらの作品群で物語を紡げる人をキュレーターに迎えて欲しいものです。
国西美だけじゃなくいろいろな美術館で、所蔵品だけで展覧会を構成するという事例がもっともっと増えるといいなぁ。
Comments
Tell me what you're thinking...
and oh, if you want a pic to show with your comment, go get a gravatar!