『三代徳田八十吉展』
去年末のこと。
年明け早々どっか展覧会を観に行きたいなー、とネットを徘徊していたら、そごう美術館でおこなわれる標記展覧会のページで指が止まりました。
この色のグラデーションの美しさ。とりわけ青の深み。その鮮烈な存在感には目を奪われましたよ。
そんなわけで2011年1月8日(土)、銀座方面からの帰り道、途中下車して、横浜そごう6階へ行きました。
見入ってしまう、魅入られてしまうこの美しい色表現は、徳田家に伝わる釉薬、古九谷五彩のうち、ガラス成分のない赤をのぞいた紺、紫、緑、黄の4つの色だけで織りなされるグラデーションとのこと。
しかし三代目の作る作品の美しさはその色だけではないことが会場で現物を見て分かりました。
焼き物の見栄えの魅力のひとつに「貫入」がありますね。
標記展覧会のページのヘッドラインの背景写真は、その貫入がよく分かるように作品のアップになっていますが、昆虫の、とりわけトンボの羽根、あるいはBlogopolisの区分けを思い出してもよろしいが、陶器表面に広がる釉薬のヒビが、ボロノイ図やドロネー図とはまた違うカオスを作りだし、陶器に味わいをもたらしています。
しかし三代目の作品には、もうひとつ、ビジュアル的な要素がありました。
それはおそらく皿にのみに現れるものなんじゃないかと思うんですが、皿の中央、一番低い部分に、普通の貫入とはまた別のヒビが走っているものがあります。
車のフロントガラスのような砕け散らないガラスを細かく割ったようなヒビです。
普通の貫入は割と均質なヒビの入り方をしていますが、このガラスを割ったようなヒビは、ある部分は大きかったり、また別の部分はかなり小さかったりと、ずいぶんランダムです。そしてヒビの部分に色が浸入して濃くなり、ヒビでない部分は透明度が高くなっています。
そのため遠くから見ると、色の塗りだけでは表現できないであろう色合いを発していました。
→の皿の中央部、ザクザクした感じの濃い色がありますが、ガラスヒビのような貫入を通すと、このような見栄えになります。
もうひとつ面白いなぁと思ったのは、同じ絵付けをしても、温度を変えて何度も焼くと、どんどん絵柄が変わってきたので、それぞれ別の作品にした、という説明。
「石畳」という作品をさらに焼くと別な模様になり、それを「臨界」と名付けた。
その「臨界」をさらに焼くと、また別な模様になり、それを「未来」と名付けた。
正方形の格子模様の「石畳」をさらに焼くとできた「臨界」というのは、下の「芽生」のような模様でした。
どのような物理現象によるものかは知りませんが、その絵柄の変化の仕方が実に面白い。前に wonderfl に投稿されていた反応拡散波ってヤツなのかなぁ。
会期は2011年1月2日(日)~2月13日(日)。もういっぺん観に行きたい。今度は図録を買いたい。
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