『誕生!中国文明』
平成22年8月7日(土)は竹橋の国立近代美術館『建築はどこにあるの?』に続いて、上野の東京国立博物館で標記展覧会を見てきました。会期は平成22年7月6日(火)~9月5日(日)です。
冒頭の写真にある緑色の文物。トレードマークになっているんですが、数ヶ月この展覧会のチラシを見たとき、これは何としても行かなくては、と思いました。
古代中国には動物の顔をかたどった獣面文という意匠があります。
銅の器などには、ラーメン丼の周辺を飾る渦巻き模様(雷文)のような四角い渦巻きと一緒にこの目玉が刻まれており、
そして古代中国と言えば忘れちゃいけない「金縷玉衣」。これも展示されているというので、喜び勇んで見てきました。
まず一番のお目当てのトレードマークの緑の文物。これは「動物紋飾板」というんだそう。楯のような大きなものをイメージしていたんですが、高さ16.5cm。中指と親指を思いっきり広げたくらいの大きさで、ちょっとしょんぼりしちゃったんですが、でも細工が巧みで色が実に綺麗。うーん、こういう大きさなら部屋に飾りたいなー、という魅惑の一品でした。
モザイクってのがイイやね。フラクタルやカオスにもつながりつつも、秩序も感じさせる。
金縷玉衣はこれまた孔子暗黒伝も影響ですが、でも古代中国史のビジュアル本などでは必ず掲載されている文物ですね。この緑色のモザイクはその名のとおり「
玉は古代中国でとても珍重された鉱物で、この玉を磨いて作る円盤「
展示番号138の「『関中侯印』金印」という展示物の説明には以下のようにありました。
漢時代の公印は身分によって材質が異なり、皇帝・皇后は玉、総理大臣・高級貴族・外国の王は金、大臣クラスは銀、それ以下は銅と決まっていた。
なんと金よりも貴重なものだったんですね玉って。ところでこの玉、古代中国ではとても貴重な石だったという知識は持っていたんですが、じゃあ、それって何の石なの? というところまでは突っ込んで調べたりはしませんでした。
本展覧会の展示ラベルの英文を読むと jade と書いてある。ほう、玉ってのは翡翠のことだったのか、と初めて知りました。
そういや翡翠は、糸魚川近辺の縄文期の遺跡からネックレスが出土したりして、日本でも古代においては重要なアイテムですね。
本展覧会では、今ひとつ思わぬ知識を得ることができました。
第三部「美の誕生」と題されたコーナーの冒頭説明文には以下のようにあります。
中国文明の特色は、古代から現代まで途切れることなく続いていることです。
これは、エジプト、メソポタミア、インダスなどの古代文明と中国文明が大きく異なる点です。
えー、そうだっけ。黄河文明って断絶してなかったんだ、と新たな驚きと発見の瞬間でしたよ。
中国の悠久の歴史が生み出した文物の多様さは実に素晴らしいですね。
古代中国においては昆虫食がおこなわれていたことを示す「炉の副葬品」(展示番号52)などはかなり興味深い。蝉が串焼きになっている様が表現されていました。
埋葬時、死者の口に玉で作った蝉を含ませるという風習があったけど、蝉は特別な昆虫だったのかなぁ。
あと、とても惹かれた文物をもうひとつご紹介。
展示番号70の「三彩盂」という器。説明書きには以下のようにあります。
盂とは底部が湾曲した器のこと。
型を使って成形したものと推測される。筆洗とも指摘されるが、片手にすっぽりと収まり、上から覗くときの形、装飾が美しいことを考えると、酒を楽しむものと考えたい。
これは器の内部が白、緑、茶のマーブル模様に彩られており、それが釉薬の艶を放っていて実に美しいんです。
酒あんま好きじゃないんで、これで酒を飲みたいとは思いませんが、この内側の三色の美しさには見とれてしまいました。
陶芸の魅力はやはり釉薬が作り出す滲みや垂れの模様の美しさですよね。
左の写真は「三彩盂」ではなく「三彩双龍耳瓶」というものですが、色遣いまったく同じなので参考用として写真を貼り付けておきます。
やっぱ古代中国は良いね。
この展覧会は上野の後、福岡、奈良と巡回するとのこと。詳細は公式ウェブサイトをご参照ください。
ところで「動物紋飾板」。ミュージアムショップにいろんなアイテムとして売られていました。マグネット、付箋の表紙、ピンバッジなどなどなど。
絵はがき以外あまり買わないワタクシですが、ついつい辛抱堪らず、本の栞とケータイストラップの2点お買い上げ。現在もはぁはぁしてます。
古代中国の伝奇ものというと酒見 賢一の「陋巷に在り(新潮文庫)」も外せないね。
- 陋巷に在り(1) 儒の巻
- 陋巷に在り(2) 呪の巻
- 陋巷に在り(3) 媚の巻
- 陋巷に在り(4) 徒の巻
- 陋巷に在り(5)妨の巻
- 陋巷に在り(6) 劇の巻
- 陋巷に在り(7) 医の巻
- 陋巷に在り(8)冥の巻
- 陋巷に在り(9) 眩の巻
- 陋巷に在り(10) 命の巻
- 陋巷に在り(11) 顔の巻
- 陋巷に在り(12) 聖の巻
- 陋巷に在り(13) 魯の巻
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