『飛騨の円空』

2013 / 02 / 09 by
Filed under: 展覧会日記 
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『飛騨の円空』

『飛騨の円空』

2013年2月1日(金)、上野トーハクで標記展覧会を観ました。
会期は2013年1月12日(土)~4月7日(日)。会場は本館1階特別室。いつぞや『出雲展』をやった場所。
平成館ではないため、そのスペースはあまり広くない。しかしだからこそ犇めくように円空仏が充満しているその空間は、何とも心地よいではありませんか。

荒々しい鑿跡が生み出す大胆で力強い造形が実にカッコイイ。
他のどんな木彫仏像とも似ていない個性にとにかく目を瞠る。
いやあ素晴らしいもんですねぇ。

裾のたっぷりした衣装の立像は、その袖の部分が、杉の木をデフォルメしたようなギザギザの形に削られている。
合掌している様の表現は、掌があるあたりから足元まで、突き出すような三角形に断っている。
このように、造形はある程度決まったフォーマットに則っているのが目につきます。
また本来、目に触れない像の背面は、木材を断ち割ったままで全く手を加えていない。
目と眉は同じように刃を当てただけなので、まるで四つ目のように見える、などなど。

こういう状態を見ると、円空仏は量産のために独自の進化を遂げたんだなぁ、ということが偲ばれます。
衆生教化を目的として、一般民衆などにも、どんどん彫って、どんどん配ったんでしょうかね、これを拝みなさい、みたいな感じで。いやむしろ一般民衆から乞われたのか。

一部の仏像は、素材である木の形状や表面の質感などを活かしたままゆえに、仏像としては異例の形状になったりしていますが、そういうのを見ると、これは仏像を造るために人の意志が木を彫ったのではなく、木の中に潜み隠れた仏性が外に出てくるのを人が手伝ったんじゃなかろうか、と何だか夏目漱石「夢十夜」の第六夜のような気分になるのを禁じ得ません。

また指先に乗るくらい小さな阿弥陀仏も展示されています。これは円空としてはけっこう精緻な彫りという印象。
まぁ、サイズが小さいから相対的に鑿の彫り跡の密度が高いということなんでしょうが、これらには所有欲を刺激された次第。

仏像に限らず、神像もいろいろありましたが、これはやはり本地垂迹や神仏習合ということですか。その割には柿本人麻呂像などもありましたが。
宇賀神って名字、そうえいばあったような気がするなぁ程度の記憶が、頭の奥の奥に霞んでいたんですが、そういう名前の神様がいたんですねー。
その姿は、とぐろを巻いた蛇の胴体に老人の頭がくっついたものという、なんとも不気味な形状。燭陰を思い出しますねぇこれは。

で、個人的なベストは、本展のキービジュアルにもなっている両面宿儺坐像。
日本書紀で怪物扱いされたヤマト朝廷にまつろわぬ民。土蜘蛛や長髄彦、悪路王の同類。
その不動明王のような造形、実にかっこいいですね。

ところで日本における個性的な木彫りの仏像を作った僧というと、もうひとり思い浮かびます。その名は木喰
トーハク本館常設展示室1階仏像コーナーに、円空仏と木喰仏がそれぞれ1体ずつ並んでいましたが、次は木喰仏の展覧会も見てみたいものです。



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