『日本の「妖怪」を追え! 北斎、国芳、芋銭、水木しげるから現代アートまで』

2013 / 07 / 18 by
Filed under: 展覧会日記 
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『日本の「妖怪」を追え! 北斎、国芳、芋銭、水木しげるから現代アートまで』

『日本の「妖怪」を追え! 北斎、国芳、芋銭、水木しげるから現代アートまで』

三井記念美術館で開催中の『大妖怪展』に続く、2013首都圏夏のお化け祭り第2弾は、横須賀美術館の標記展覧会です。
会期は2期構成で、前期が2013年7月13日(土)~8月4日(日)、後期が2013年8月6日(火)~9月1日(日)。ウキウキワクワクソワソワしながらその初日に行ってきました。

3部構成で、第1章が江戸期の作品、第2章が明治・大正期の作品、第3章が昭和から現代の作品となっています。水木しげる妖怪画は過去を継承した伝統的妖怪を扱ったものであるため第2章に分類されています。

第3章は人の心に潜む暗部をグロテスクに描いた作品ということで、本義的な意味での「妖怪」を扱ったものではありません。プレスリリースでも予告されていましたが、妖怪の展覧会でそれは如何なものか、と苦々しく感じたものです。しかし「江戸の妖怪革命」という本を読んで、考えを改めました。

『大妖怪展』の感想のときにも触れた「江戸の妖怪革命」には、元々は外部に存在した共同体験としての妖怪は、科学文明が進むにつれて、人間内部に潜むようになり、個別体験へと変貌した、と書かれています。そう考えると、第3章に展示された作品も妖怪を扱ったと考えてもいいのかもなぁ。

てゆーか、昭和30~40年代の戦後シュルレアリスムは大好物な私。妖怪であるない関係なく、もう萌えまくりっすよー!
昭和期の作家として、池田龍雄、小山田二郎、鶴岡政男、山下菊二。
そしてやっぱりあった中村宏(でも1点のみ)。一つ目セーラー服女子高生は板橋区立美所蔵《遠足》が展示されていました。
特に充実しているのは池田龍雄と小山田二郎。それぞれ7点ずつ。池田龍雄作品は全期展示。スゴい!

ところで横須賀美術館は池田龍雄を3点所蔵しているんですよね。そのうち2点は《化物の系譜シリーズ》なんですよ。
他所から借りた《化物の系譜シリーズ》が4点展示されているのに、なぜ自館所蔵の池田龍雄作品を1点も展示しないのか。
常設展示室にあるのかと思いきやそちらにも全くない。不っ思議ー。
横須賀美術館収蔵品には今展覧会第3章のテーマにマッチしそうな絵画がいろいろあるんだから、常設展示室で、連動企画的にそれらを展示しても良かったんでは。

また、現代作家として、今道子松井冬子、フジイフランソワ、鎌田紀子(全員女性作家!)の作品が観られます。
今をときめく松井冬子センセイの本画が2点、それぞれの下絵が1点ずつ展示されているのが、頑張ったところか。
個人的にはフジイフランソワという作家の絵が気に入りました。伊藤若冲《付喪神図》の本歌取り作品《付喪神-壱》《付喪神-弐》《御茶どうぞう》が kawaii! あと、仔犬を白澤に変貌させた芦雪の本歌取り《ここに居ぬ》も気になるところ。
なお、2013夏のお化け祭り第3弾、そごう美術館『幽霊・妖怪画大全集』では、その伊藤若冲《付喪神図》が展示されるので、オリジナルとオマージュを見比べてみるのも、また一興。

おそらく他妖怪展と本展との差別化ポイントは(第3章は、主催者も認めるとおり「いわゆる妖怪ではない」ので除外するとして)、第2章でしょう。
郵便報知新聞と東京日々新聞の怪奇事件記事が観られます。
あと河鍋暁斎の《姑獲女》をはじめとした掛軸が見応えあり。
珍しいところでは小川芋銭ですかね。あえて河童(水魅)ものを展示しないのはキュレーターのこだわりなのか。《雪女》という掛軸が気になりました。
被りものとしては月岡芳年の《和漢百物語》と《新形三十六怪撰》から数葉ずつ。

さて最後に第1章について。
他展と被りまくりな江戸期ですが、国芳が見どころになると思います。狸の戯画と、野菜を人に見立てて四谷怪談や累ヶ淵の場面を描いた戯画が目を惹く。
太田記念美術館では2013年10月1日(火)~11月26日(火)の会期で『笑う浮世絵 ―戯画と国芳一門』という展覧会が企画されていますが、そのチラシには後者の系列の絵が使われていましたねぇ。そちらも期待大。

あと《画図百鬼夜行》は被りものですが、三井記念美のと違って、小学生の教科書みたいないたずら書きがないから、安心して観られますよ。

なお、本展前期の目玉は、歌川国芳《相馬の古内裏》、歌川芳虎《相馬古内裏》、落合芳幾《百鬼夜行 相馬内裏》の国芳一門による「相馬の古内裏」3つの錦絵の競演ですが、実はその競演にもうひとり門弟が参加しています。
それは月岡芳年。第2章で展示されている《和漢百物語 大宅太郎光圀》がその作品。国芳の《相馬の古内裏》では1体の巨大髑髏が出現していますが(中央でその髑髏を睨みつけているのが大宅太郎光圀その人)、原作であるところの読本『善知烏安方忠義伝』では、瀧夜叉姫の幻術は、芳年の絵のように、大勢の髑髏が合戦を繰り広げるというものとのこと。ってわけでこれも要チェック!

ところでこの展覧会、関西在住の国文学者・田中貴子先生も観覧をご希望とのこと。企画者も感涙必至ですね。



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