『大正イマジュリィの世界』

2011 / 01 / 23 by
Filed under: 展覧会日記 
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『大正イマジュリィの世界』

『大正イマジュリィの世界』

2011年1月22日(土)は渋谷の松濤美術館で終了間際の標記展覧会を観てきました。会期は2010年11月30日(火)~2011年1月23日(日)。

松濤美術館って初めて行ったんだけど斬新というか何というか、なかなかインパクトのある美術館ですなぁ。
閑静な住宅街の一角に石積みを模した建物が鎮座ましまして、これが渋谷区営の設備で、何と入館料が300円という激安さ。
設備面積は割合狭めで展示スペースは地下1階と2階というずいぶんイレギュラーな造り。迷ったさ。

地下1階は展覧会の第一部「大正イマジュリィの13人」と題し、13人の作家がピックアップされ、彼らの作品が展示されています。
2階は第二部「さまざまな意匠」と題されたもの。その中で「エラン・ヴィタルのイマジュリィ」「怪奇美のイマジュリィ」「子ども・乙女のイマジュリィ」等々、作者関係なく各テーマに沿った絵が並べられており、それぞれのテーマを俯瞰するといった趣。

第二部は心に響かなかったので第一部について述べます。
13人もいればいろいろな個性がありますが、私としては次の3人に萌えた。

まずはその画力の確かさに圧倒される高畠華宵
次に洗練されたデザイン性の高さが光る小林かいち
そして病的なデカダンスから目をそむけられない橘小夢。

高畠華宵は丸尾末広経由で知った絵師ですが、実に良いですねー。エロティシズムすら秘めた目付きがとりわけ良い。

小林かいちは今回現物を見て、しまったー、と思いましたよ。以前、ニューオータニ美術館でやった展覧会に行っとけば良かった。
儚さ、美しさ、繊細さ。いろいろなものが、こんな小さな世界に凝縮されている奇跡は感動的ですね。

橘小夢という人は初めて知ったんですが、存在するものをそのまま描くのではなく、心の中に潜む負の感情を形象化する。こういうのかなり趣味です。

ところで橘小夢作品を観ていていろいろな発見をしました。
水木しげる先生はその絵にいろいろなものを引用していますが、その元ネタの一つがありました
「河童千一夜」という河童を主役にした連作集があるんですが、その中の「河童の手」という話の表紙は、橘小夢の「水魔」の引用でした。

橘小夢「水魔」

橘小夢「水魔」

水木しげる「河童の手(河童千一夜)」

水木しげる「河童の手(河童千一夜)」

橘小夢「刺青」

橘小夢「刺青」

あと、京極夏彦の京極堂シリーズ文庫版の分冊じゃない方。そのカバーは妖怪の立体フィギュアの写真です。
この妖怪フィギュア、基本的には鳥山石燕が画図百鬼夜行に描いた姿が立体化されたものです
ところが明らかに鳥山石燕を元にしていない妖怪が二体あります。
姑獲鳥うぶめ絡新婦じょろうぐもです(川赤子もだろ、という意見もあるとは思いますが、川赤子はこの二体ほどは離れていないでしょう)。
絡新婦の造形は土蜘蛛をアレンジしたものかと思っていたけど、もしかしたら橘小夢の「刺青」が元ネタなのかもなぁ(蜘蛛が上下逆だけど)。

そんな嬉しい発見ができた展覧会でした。

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