『没後120年記念 月岡芳年(前期)』

2012 / 10 / 10 by
Filed under: 展覧会日記 
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『没後120年記念 月岡芳年(前期)』

『没後120年記念 月岡芳年(前期)』


去年は歌川国芳没後120年ということで、大規模な国芳展が複数か所で開催されました。
今年はその弟子である月岡芳年の没後120年に当たるとのこと。そんな月岡芳年の回顧展が、現在、太田記念美術館で開催されている標記展覧会です。師匠と1年違いということはかなりの早死にだったんですねぇ芳年は。

本展の会期は、2012年10月2日(火)~11月25日(日)の約2か月ですが、前期と後期に分れており、全作品展示変えを敢行。それぞれの会期は、前期が2012年10月2日(火)~10月28日(日)、後期が11月1日(木)~11月25日(日)となっていますが、さらに、前期は前半と後半に分れ、前期前半が10月2日(火)~10月14日(日)、前期後半が10月16日(火)~10月28日(日)というスケジュール。

私が目当てとしていた作品は前期の前半のみ展示という情報を得たので、急ぎ2012年10月8日(月)に前期を観てきた次第。

そのお目当ての作品とは、肉筆の掛軸画で名を「幽霊之図」。
上半身は裸、下半身に血染めの布をまとった女性の後ろ姿。なにやら抱きかかえているらしき様子。近寄って見ると、赤子の蘆が覘いている。題名は幽霊になっていますが、描かれているのは産女という、出産の際に死亡した女性の亡魂が妖怪化したものです。
この産女が実にイロっぽい。うなじ、襟首、腰つきの一連の曲線がかなりヤバい。ついつい見とれて、そのまま取り殺されそうです(産女はそういう妖怪ではないですが)。

ちなみに本展では産女を描いたものが他に2点あります。「和漢百物語 主馬介卜部季武」と「和漢奇談鑑 晋武将 卜部季武」で、どちらも卜部季武が産女と遭遇した逸話(「今昔物語集」巻27-43「頼光の郎等平季武、産女にあひし話」)を描いたもの。これらの産女は猿みたいに皺皺の痩せこけた女性に描かれており、魅惑されようもないって感じ。

さて、無残絵、武者絵、歴史絵、怪異画、女性画などいろいろなジャンルを描いた芳年ですが、本稿では女性画について取り上げてみたいと思います。

芳年の作品に「風俗三十二相」というシリーズものがあります。
灸の熱さに耐える女性を描いた「あつさう(熱そう)」や蚊帳に入ってきた蚊に刺されて悶える女性を描いた「かゆさう(痒そう)」など「~そう」な状態の女性を描いたもの。

それと同じようなテーマの「見立多以尽」というシリーズの1枚が展示されていました。このシリーズは「~たい、~したい」という願望を抱いた女性を描いたものとのこと。
本展ではその中の1枚「おしてもらたい」というのが展示されていました。
苦しそうな女性がこちらを訴えかけるような目つきで見つめている絵。
これは「押してもらいたい」だそうで、突然の癪で苦しんでいる状態とのこと。この当時、女性の癪は、男が患部を押すと治るという俗信があったとかで、男に腹を押してもらいたがっているさまを描いたものだという。

この「風俗三十二相」の2枚と「見立多以尽」の1枚。耐え、苦しみ、悶える女性がエロいんですよねー。んなわけで、最初に書いた「幽霊之図」もあわせて、本展のエロスな側面をレポってみたでゲスよ。

もちろん無残絵、武者絵、歴史絵、怪異画などの硬派な作品もたっぷり楽しめます。



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