『ジェームズ・アンソール展』

2012 / 11 / 07 by
Filed under: 展覧会日記 
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『ジェームズ・アンソール展』

『ジェームズ・アンソール展』

2012年11月3日(土)、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で標記展覧会を見てきました。本展はベルギーのアントワープ王立美術館が所有するアンソール・コレクションがベースになっているもので会期は2012年9月8日(土)~11月11日(日)とのこと。

アントワープ王立美術館と言えば、2年前に初台の東京オペラシティアートギャラリーで『アントワープ王立美術館展』が開催されました。
あれは確か、改修工事に伴う美術館の閉鎖を機にした収蔵品による出稼ぎ展覧会でしたね。上野の東京都美術館の『マウリッツハイス美術館展』と同じですな。この展覧会もコレクション大放出な出稼ぎ展覧会のひとつなんでしょうか。

ジェームズ・アンソールと言えば、色合いは明るいけれど、そのモチーフが髑髏やら仮面やらといった、観ていて何とも暗欝で不吉な印象を抱かされる絵を描き続けた、とても心ときめく画家です。

ここで突然、水木しげるマンガ元ねたコーナー!

水木しげる先生と言えば、その作品中に古今東西の作品を引用していることでも、美術好きとしては目が離せないマンガ家。
横浜美術館で開催された『マックス・エルンスト展』のレポのときに、「墓場鬼太郎 アホな男」の怪奇オリンピック参加者等の4点について触れましたが、アンソールの絵からも引用があります。

引用先はやはり「墓場鬼太郎 地獄の散歩道」。傍若無人のビート族を恐怖のどん底に叩き込んだ深大寺すきやきパーティーの一場面

このコマはアンソールの "Skeletons Fighting Over a Pickled Herring" という絵を引用したものです。直訳すると「酢漬け鰊を巡って争う骸骨たち」ってな感じでしょうか。

「薫製ニシンを奪い合う骸骨たち」

「薫製ニシンを奪い合う骸骨たち」

墓場鬼太郎は後に「鬼太郎夜話」というタイトルでリライトされています。実在したビート族という名称が、架空のナンダカ族に変えられてるそのリライト版の方でもこのコマは残っています

ところで一番見たかったこの絵、実は本展には出品されていません。ザッと調べたところ、ベルギーはベルギーでもアントワープ美術館ではなく、ベルギー王立美術館の収蔵品らしい。しかも2006年に上野に来ていたらしい。
国立西洋美術館で、2006年9月12日(火)~12月10日(日)の会期で『ベルギー王立美術館展』というのが開催されていたそうですが、その展覧会に出品されていたとのこと。邦題は「薫製ニシンを奪い合う骸骨たち」。

うーん、水木マンガの元ネタ観たかったなぁ。2006年だとまだ今ほど頻繁に展覧会巡りをしていなかったからなぁ。惜しいことをしたものだ、と前知識を仕入れて本展に臨んでいたら、「絵を描く骸骨」に「薫製ニシンを奪い合う骸骨たち」が描かれてる!

「絵を描く骸骨」

「絵を描く骸骨」

「絵を描く骸骨」はアトリエで絵を描くアンソールを骸骨として描いた絵ですが、背後のアトリエの壁、画架の上側の接合部の右横に「薫製ニシンを奪い合う骸骨たち」が描かれていました(赤い○で囲った絵)。でもやっぱり現物を観たかったものです。

あと今回のキービジュアルになっている「陰謀」をよくよく見ていて、おや、と思いました。

「陰謀」

「陰謀」

上段最右列の仮面(赤い○で囲った絵)。もしかして死神のモデルはこれなのかなぁ。
水木しげる描くところの死神の顔はしゃれこうべですが、下あごがしゃくれています。その様子が、このアンソールのこの絵のヤツと似ていますよね。

「河童の三平」貸本版初期の死神は別にしゃくれじゃないんですが、時代を経るに従っていつの間にやら、しゃくれに
マンガ家の絵の変化の範疇なのか、モデルとして採用したものなのか、なかなか迷うところです。ちなみに死神完成型はこんなん



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