『ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア』
Bunkamura ザ・ミュージアムで2013年3月9日(土)~4月21日(日)の会期で行われている標記展覧会を初日に観ました。意外と混んでおらず、スムースに鑑賞できました。
「パトラッシュ、ボクはとっても眠いんだ」
現代日本における働き盛り世代周辺の人々にとって、ルーベンスというとやはり「フランダースの犬」じゃあないでしょうか。
借家を追い出されたネロとパトラッシュは、寒さをしのぐため入り込んだアントワープ大聖堂で、たまたま緞帳が上がっていたため、常日頃は観覧料を払えず見ることが叶わなかったルーベンスの「キリスト昇架」と「キリスト降架」を見ることができ、そのまま天に召されました。
一方、我々はというと、本展覧会でネロが見た絵を観ることは叶いません。まぁ教会祭壇画ですからねー。日本で開催される展覧会で見られるわけないわな。とは言っても「キリスト降架」については版画バージョンの作品が展示されており、ネロの死の間際の心に思いを馳せることができます。
『美術にぶるっ! 第2部 実験場1950s』
『美術にぶるっ!』という展覧会は、東京国立近代美術館開設60周年を記念して、東近美所蔵品によって編成された、建物の4階から1階まですべてを使った企画展と聞いていました。
しかし1階『第2部 実験場1950s』の第2章早々、鶴岡政彦「重い手」が展示されてて面食ったですよ。
えっ、「重い手」って東京都現代美術館所蔵だよね?
ラベルやリストを見ると、やっぱり都現美所蔵と書いてある。MOMAT じゃなくて MOT じゃん。
他の展示作品についてもリストを見ると、東近美所蔵品だけでなく、日本中のあちこちの美術館や個人から作品が集められているじゃあありませんか。
第1章で展示されていた写真群は、ストレート過ぎる反戦メッセージが好みでないから、作品もリストも見ずに、チラシすら取らずに通過したんで、この時点で初めて気づいたっす(後で戻ってチラシだけは入手しました)。
つまり、この『第2部 実験場1950s』は、東近美にとどまらず、あちらこちらから集められた作品によって、1950年代のアート・ムーブメントを概観するというものだったのですね。
だとすると、この『美術にぶるっ!』を構成する二部は、それぞれ別の展覧会と捉えるべきじゃあないですかね。
そう考えると、1階で企画展(第2部 実験場1950s)、4階から2階で常設展(第1部 MOMAT コレクションスペシャル)という、ふだんの東近美と同じスタイルだったわけだ。
『多賀 新 ―線描の魔術師―』
もう30年くらい前ですかねー。春陽堂書店という出版社から文庫版の江戸川乱歩全集が刊行されまして、そのカバー絵に強い衝撃を受けました。
細密な線。モノクロームのグラデーションの美しさ。エロスとタナトスが支配する暗黒幻想世界を描いた緻密な画面構成。心を鷲掴む絵の数々に酔い痴れたもんです。
江戸川乱歩はそれほど興味ないのに、カバー目当てで毎月刊行される文庫本を買い続けました。それらの文庫本は積ん読のまま月日が経ち、やがてそのカバー絵をまとめた画集が出版されました(「銅版画・江戸川乱歩の世界」)。もちろん即買い。文庫本の方は散逸してしまったのでした。そんな過去の想ひ出。
それらの心躍る絵を描いたのは多賀新というお名前の版画家でした。
その多賀新の展覧会が2012年11月3日(土)~2012年12月16日(日)の会期で開催されるというので、終了間際の2012年12月12日(水)、会場である芳澤ガーデンギャラリーへ行ってきた次第。
『古都鎌倉と近代美術』
神奈川県立近代美術館鎌倉で鯰絵を観た後は、鎌倉別館へ移動、標記展覧会を観ました。
本展は、鎌倉ゆかりの作家による鎌倉を扱った作品を展示することで、古都鎌倉と近代美術について再考することをテーマとしたものらしい。会期は、鎌倉本館で開催されている『鯰絵とボードレール展』と同じスケジュールの2012年6月23日(土)~9月9日(日)となっています。
『鯰絵とボードレール展』
2012年8月4日(土)は神奈川県立近代美術館鎌倉で標記展覧会を観てきました。
鯰絵。地下に棲む巨大な鯰が地震を起こすという伝承に関わる浮世絵。
ボードレール。「悪の華」で有名な19世紀フランスのデカダン派詩人。
このタイトル、なんか想像力をくすぐると思いませんか? この二つに何か関連性があるんだろうか。
ボードレールの詩が取り入れられた鯰絵。鯰絵にインスパイアされた詩を書いたボードレール。
そんなものが存在してたりして、などと、斜め上な想像の翼がはためいちゃいましたよ。
で、結論から言うと、鯰絵とボードレールには何の関係もありませんでした(ずこー)。